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更新日:2023年3月24日

文化財情報vol.37

浜松市文化財情報/Vol.37

浜松市文化財情報

Vol.37 平成23年4月15日

市内最大の方墳、狐塚古墳を発掘しました

浜松市北区細江町にある狐塚古墳は、半世紀ほど前に埋葬施設の一部が掘り出され、鉄製短甲(よろい)や鉄鏃(やじり)などが出土しました。
その後、埋葬施設を含む古墳の大部分は土取りによって消滅しましたが、幸いにも全体の4分の1ほどが残されていました。
2011年1月から3月にかけて、残存していた墳丘を発掘調査し、狐塚古墳は5世紀中葉(約1600年前)に築かれた一辺22mの二段築成の方墳で、葺石と埴輪をそなえることが判明しました。


埴輪列の調査のようす

葺石と埴輪

古墳の表面には拳大から人頭大の石を敷き並べた葺石が上段、下段ともに認められました。
とくに上段は残存状態が良好で、調査部分のほぼ全面において葺石が確認できています。
下段葺石についても、墳丘北側が後世の開発によって失われているものの、北西部、東南部においては基底部分を確認することができました。
葺石は川原石を使用し、やや大振りの石を基底石もしくは区画帯として並べた後、その間を小振りの石で充填している工法が観察できます。
上段と下段の斜面の間には幅1.8mほどの平坦面が巡っており、平坦面に立ち並べていた円筒埴輪列を検出しました。
円筒埴輪は築造当初の位置をとどめるものが多く、埴輪を樹立した技法が明確になりました。


円筒埴輪が樹立

副葬品からわかること

かつて埋葬施設から出土した副葬品として、長方板革綴短甲(ちょうほうばんかわとじたんこう、鉄のよろい)や鉄鏃、刀剣などが知られています。
長方板革綴短甲は、今回の調査に合わせて詳細を再検討し、その特徴が明らかになりました。
短甲は体の上半部を覆う防具で、鉄板を革紐で綴じて作られています。
近畿地方にあったヤマト王権から直接的に配布されたものとみられ、狐塚古墳の被葬者が当時の王権と密接な関係をもっていたことを物語ります。
同じような短甲は静岡県内では10数例発見されていますが、いずれも豊富な副葬品をもつ有力古墳からの出土例であり、限られた人物しか入手できなかったことが分かります。
今回の調査によって数多くの埴輪が出土しています。
出土した埴輪には、円筒埴輪、形象埴輪が認められます。
いずれも古墳の表面に立ち並べていたもので、形象埴輪には、蓋(きぬがさ)、家、靫(ゆぎ、矢入れ具)、盾、甲冑などの各種が認められます。
浜名湖北岸地域では最も古い埴輪の特徴を有しており、これら埴輪の製作にあたっても、ヤマト王権からの技術指導があった可能性があります。


長方板革綴短甲


形象埴輪

狐塚古墳は「方墳」

狐塚古墳は方墳というやや特異な形態をしています。
方墳としては浜松市内では最大で、静岡県内でも屈指の大きさを誇ります。
狐塚古墳と同じ古墳時代中期の事例を参考にすると、方墳には大型前方後円墳の被葬者を補佐するような官僚的役割を担った被葬者の性格がうかがえる場合があります。
狐塚古墳に葬られた人物にも、通常の地域の有力者とは異なる武官的な立場から、浜名湖北岸域の水上・陸上交通の管理を担う被葬者像が浮かび上がります。


山門の柵

今年も二俣城を発掘調査しました

今年も天竜区にある二俣城の発掘調査を実施しました。
二俣城は二俣の街を見下ろす小高い山の頂上にあり、徳川氏と武田氏の間で激しい争奪戦が繰り広げられた城であることや、徳川家康の長男である信康が非業の最期を遂げた場所として広く知られています。
今回の調査では、本丸中仕切門の南側、二の丸から本丸へと至る通路部分の発掘を行いました。
本丸中仕切門の手前から大手口にかけての二の丸の外周には、高さ1.2mほどの土塁がめぐっていますが、この土塁の下端を調査したところ、角礫が多数見付かりました。
これらの角礫は石垣に用いられた石材と考えられますが、残念ながら後世に破壊されており、原位置を保っているものはほとんどありませんでした。石垣は破壊されていましたが、土塁は良好な状態で残っており、土を交互に積み上げて土塁を築いた痕跡が確認できました。
3月6日(日曜日)には現地説明会を開催し、120名の方にご参加いただきました。
説明会では、熱心な
歴史ファンの方を前に、発掘調査現場と出土品の解説を行いました。


発掘した土塁


現地説明会

文化財日記抄

3月には、こんな調査活動などを行いました。

1日

(火曜日)

天竜区二俣町

二俣城跡試掘調査開始(~11日)

4日

(金曜日)

西区篠原町

国方遺跡工事立会い

5日

(土曜日)

北区

姫街道の歴史と歩き方講座[参加者41名]

6日

(日曜日)

天竜区二俣町

二俣城跡現地説明会[参加者120名]

7日

(月曜日)

天竜区佐久間町

川合花の舞保存会との意見交換

10日

(木曜日)

北区引佐町

横尾歌舞伎映像記録作成立会い

14日

(月曜日)

北区細江町

狐塚古墳試掘調査(~17日)

15日

(火曜日)

北区引佐町

龍潭寺本堂保存修理工事進捗確認

16日

(水曜日)

中区東伊場

伊場遺跡資料館「梶子遺跡発掘速報展」開始(~31日)

18日

(金曜日)

北区細江町

狐塚古墳本発掘調査(~30日)

23日

(水曜日)

東区天竜川町

松東遺跡試掘調査

25日

(金曜日)

浜北区貴布祢

旧平野家住宅現状確認

26日

(土曜日)

天竜区・浜北

「天浜線文化財列車」講師派遣

31日

(木曜日)

北区引佐町

横尾歌舞伎映像記録作成完了検査立会い

まいぶんガイド ご活用ください!

小中学生向けに埋蔵文化財業務内容を紹介した「まいぶんガイドブック」を作成し、発掘調査現場見学などの教材として活用いただいています。
この度、一部内容を改訂したガイドブックの第二版を刊行し、市内の小中学校へ配布しました。
学校活動などでの活用を希望する方はお気軽にお問い合わせください。

岩水寺の仏像が重要文化財に指定されます!

去る3月18日(金曜日)、国の文化審議会は岩水寺(浜北区根堅)の木造地蔵菩薩立像を重要文化財に指定するよう文部科学大臣に答申しました。
この結果、近日中に行われる官報告示を経て、市内の重要文化財(美術工芸品)は累計13件となります。
彫刻の国指定は、大正12(1923)年の摩訶耶寺(北区三ヶ日町)木造不動明王立像以来88年ぶりとなります。
本像は、鎌倉時代中期(13世紀後半)の制作とみられ、
檜材、寄木造、像高165.3cmの地蔵菩薩像です。
全裸の姿につくり実際に縫製した衣を着せる、いわゆる裸形着装像
(らぎょうちゃくそうぞう)で、唇をわずかに開いて歯を見せる点やその歯や足爪が水晶で造られていることから、形式的な希少さに加え造形の上でも非常に優れています。
※本像は秘仏であり、通常拝観することはできません


掘立柱建物跡

<編集後記>

新しい年度を迎え、本紙タイトルの画像もリニューアルしました。
昨年度、浜松市指定文化財に指定されたばかりの「金銀装円頭大刀」です。
この大刀は鳥居松遺跡で2008年に発見されたもので、かつての川の跡から出土しました。
金の大刀が川底に静かに沈められ、水面からの光が一筋、反射している様をイメージして、画像を作成してみました。

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お問い合わせ

浜松市役所市民部文化財課

〒430-8652 浜松市中央区元城町103-2

電話番号:053-457-2466

ファクス番号:053-457-2563

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