更新日:2021年4月15日
第5章 分野別施策 3.保健・医療
【基本方針】
疾病・障がいに関する知識の普及・啓発を図り、障がいの早期発見に努めるとともに、身近な地域において、保健・医療・福祉の連携した支援の提供体制の充実を図ります。
基本施策
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施策
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(1)保健・医療、リハビリテーションの充実
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1)障がいの早期発見
2)適切な医療、地域リハビリテーションの提供等
3)医療費の助成
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(2)精神保健福祉の推進
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1)精神保健福祉の推進
2)精神科救急システムの整備
3)こころの健康対策の充実
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【現状と課題】
- 実態調査の結果、回答者の7割以上が定期的に医療機関を受診しています。適切な医療が受けられるよう、経済的な負担の軽減が必要です。
- 医療的ケアや家庭の問題等特別な配慮が必要な子ども及び家族に対する支援体制の整備が必要です。
- こころの健康が保てず、精神疾患にかかる人や、社会生活への適応に困難を生じている人が増加しており、早期の対応とともに、家族も含めた支援が必要です。
- 精神障がいのある人に対する医療は、病状の改善等、精神的健康の保持増進を目的とすることを認識するとともに、精神障がいのある人の人権を尊重し、地域生活に向けた適切な支援に十分配慮する必要があります。
(1)保健・医療、リハビリテーションの充実
保健・医療やリハビリテーションの充実は、障がいの軽減や重度化・重複化の防止を図り、障がいのある人の自立を促進するためには不可欠です。
適切な支援が受けられるよう、必要な医療費の助成を行います。
また、重症心身障害児(者)や医療的ケアが必要な人が、心身の状況に応じた適切な医療、保健、福祉、教育その他の関連分野の支援を受けられるよう、関係機関が連絡調整を行うための体制を整備します。
1)障がいの早期発見
<取り組み・内容>
- 乳幼児健康診査の実施(健康増進課)
各健康診査(4か月・10か月・1歳6か月・3歳)の受診率の向上及び未受診者対策により障がいの早期発見を進めるとともに、健康診査後の要フォロー児に対する保健指導の充実に努めます。
- 就学時健診の実施(健康安全課)
就学予定者に対し、学校生活や日常生活に支障となるような疾病及び異常の疑いについて適切な治療勧告、保健上の助言及び就学指導等を行います。
- 母子健康相談の実施(健康増進課)
発達の遅れや障がいの疑いのある乳幼児の保護者の相談に応じます。また、医療機関・療育機関等の専門機関との連携を緊密にし、保健指導の充実に努めます。
- 「友愛のさと診療所」及び「子どものこころの診療所」の運営(障害保健福祉課)
「友愛のさと診療所」及び「子どものこころの診療所」において、子どもを対象に発達障がいや知的障がいを診療する専門機関として質の高い医療を提供するとともに、地域の教育機関や医療機関、福祉施設その他の関係機関との連携により適切な支援を行います。
2)適切な医療、地域リハビリテーションの提供等
<取り組み・内容>
- 重症心身障害児(者)支援に関する協議の場の設置(障害保健福祉課)
重症心身障害児(者)や医療的ケアが必要な人及びその家族が、必要な支援を円滑に受けることができるよう、保健、医療、福祉、教育等の関係機関が連携し、継続的に意見交換や情報提供を図る協議の場を設置します。
- 障がい者(児)歯科診療(浜松医療センター)の実施(病院管理課)
浜松医療センター歯科口腔外科において、歯科治療が困難な障がいのある人へ歯科診療を提供します。
- 障がい者施設歯科健診の実施(健康増進課(口腔保健医療センター))
市内の障がい福祉施設に出向き、施設利用者の歯科健診、保健指導を行い、定期的にかかりつけ歯科医院を受診することを啓発します。
- 心身障がい者歯科診療の実施(健康増進課(口腔保健医療センター))
歯の健康センターにおいて、「障がい者歯科協力歯科医院」との連携を図りながら、歯科診療を行います。
- 歯科訪問診査の実施(健康増進課(口腔保健医療センター))
在宅療養者を対象に歯科医師が家庭等に訪問して、歯科健診・保健指導・受診指導を実施します。
- 浜松市障がい者歯科保健医療システムの推進(健康増進課(口腔保健医療センター))
障がいのある人が安心して歯科診療が受けられるよう、身近な歯科医療機関での受診を推進します。
- 難病相談の実施(健康増進課)再掲
難病患者を対象に療養上の不安解消を図るために、医療・日常生活・社会生活・経済的問題等について相談に応じます。
- 地域リハビリテーションミニ講座(相談)の開催(障害者更生相談所)
専門的な知識を有する理学療法士が、膝や腰等の痛みを抱える人やその家族を対象に、痛みや不安に関する相談や知識の習得等、在宅でのセルフケアについてサポートします。
3)医療費の助成
<取り組み・内容>
- 自立支援医療の給付(障害保健福祉課、健康増進課)
心身の障がいの状態の軽減を図り、自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な医療を給付します。(更生医療、育成医療、精神通院医療)
- 重度障害児者医療費助成(障害保健福祉課)
重度の障がいのある人の医療費を助成することにより、経済的負担を軽減します。
- 未熟児養育医療の給付(健康増進課)
身体の発育が未熟なまま出生し、医師が入院養育を必要と認めた乳児で指定の医療機関に入院した場合に医療の給付を行います。
- 小児慢性特定疾病医療の給付(健康増進課)
国の定める小児慢性特定疾病の患者(18歳未満の人)に対して、該当疾病の治療にかかる医療の給付を行います。
- 難病患者に対する医療費助成(健康増進課)
指定難病(原因が不明で、治療法が確立していない難病のうち、厚生労働大臣が指定する疾病)の患者に対して、指定難病の治療にかかる医療の給付を行います。
- 精神障がい者入院医療費助成(障害保健福祉課)
精神障がいで精神科に入院した人の療養を促進し、本人の経済的負担を軽減するために医療費の一部を助成します。
(2)精神保健福祉の推進
こころの健康が保てず、精神疾患にかかる人や、社会生活への適応に困難を生じている人が増加しています。また、高次脳機能障がい、依存症、発達障がいについては、依然として市民の認識が不十分な状況です。
こころの健康に関する理解促進の取り組みと適切な相談対応を行うとともに、こころの健康が保てるよう専門的な支援を行います。
また、精神保健福祉は“入院医療中心から地域生活中心へ”という施策の転換に対応していくため、地域生活への移行や地域で暮らしていくための体制整備を進めます。
1)精神保健福祉の推進
<取り組み・内容>
- 精神障がいに対応した地域包括ケアシステムの構築(障害保健福祉課)
精神障がいの有無や程度にかかわらず、だれもが安心して自分らしく暮らすことができるよう、保健・医療・福祉関係者による協議の場を通じ、精神科医療機関、その他の医療機関、障害福祉サービスや介護保険の地域援助事業者等との重層的な連携による支援体制の構築を図ります。
- 精神障害者支援地域協議会の設置及び運営(障害保健福祉課)
措置入院者が退院後に継続的な支援を受けられるよう、精神科医療の役割を含めた精神障がいのある人への支援体制に関して、関係機関等と協議するとともに、退院後支援計画の作成や実施にかかる連絡調整を行います。
- 精神保健福祉相談の実施(障害保健福祉課)再掲
精神保健福祉士、保健師等による訪問、来所、電話相談を行います。
- 中山間地域訪問相談支援事業の実施(精神保健福祉センター)再掲
中山間地域において、主に訪問により、在宅の精神疾患を持つ人及び精神障がいのある人等の相談に応じ、必要な情報提供及び助言、生活支援を行います。
- 各種家族教室の開催(障害保健福祉課、精神保健福祉センター)
精神障がい等のある人の家族のための教室(統合失調症、ひきこもり、うつ病、摂食障がい)を開催します。医師等による講話や社会復帰に向けた情報提供やグループワークを行います。
- 精神保健福祉関係家族会等連絡会の開催及び活動支援(精神保健福祉センター)再掲
市内にある精神保健福祉に関係する家族会等がお互いの活動を知り、連携の強化を図ることができる場として連絡会を開催します。また、家族会等が自主的な活動を行えるように支援を行います。
- 高次脳機能障がいの相談会の実施(障害保健福祉課)再掲
静岡県が実施する「高次脳機能障害医療等総合相談事業」において、リハビリテーション科等の専門医師、作業療法士、社会福祉士、市職員等による予約制の相談を行います。静岡県西部健康福祉センターを会場として、浜松市を含む静岡県西部地区を対象に開催しており、浜松市の広報にて周知します。
- 精神障がい者入院医療費助成(障害保健福祉課)再掲
精神障がいで精神科に入院した人の療養を促進し、本人の経済的負担を軽減するために医療費の一部を助成します。
2)精神科救急システムの整備
<取り組み・内容>
- 精神科救急システムの整備(障害保健福祉課)
精神疾患の急激な発症や症状の悪化の際に、かかりつけの医療機関に連絡がつかない場合や行政に相談できない場合等、早急に医療を必要とする人に対する受診等の相談を行います。
3)こころの健康対策の充実
<取り組み・内容>
- こころの問題に関する相談の実施(精神保健福祉センター)再掲
特定の分野(ひきこもり、自死遺族、犯罪等被害者、依存問題、がん患者の家族・遺族等)について、予約制で保健師、臨床心理士、精神保健福祉士が無料の相談を行います。
- ひきこもり相談支援事業の実施(精神保健福祉センター)再掲
ひきこもりサポートセンターを設置し、必要なケースについて訪問支援を行うとともに、ひきこもり当事者の居場所の運営を行います。
- 外国人メンタルヘルス相談支援事業の実施(精神保健福祉センター)再掲
ポルトガル語によるメンタルヘルス相談窓口を設置し、面接・電話等によるメンタルヘルス相談、精神科医療機関への同行通訳、出張相談、通訳者の養成、講習会の開催等を行います。
コラム3 重症心身障がい児者とその家族を支えるために
浜松市発達医療総合福祉センター
友愛のさと診療所 遠藤 雄策
ある日、2歳のお子さんとお母さんが外来に訪ねてきました。お子さんは表情がとても豊かでしたが、言葉を発すること、寝返りすることができませんでした。痰を出すことも難しく、時々吸引器で痰を吸ってあげる必要がありました。食事も上手に食べられず、また、吐き戻しやすいため、経管栄養により、鼻から胃に管を通して液体の栄養剤を3時間ごとに注入されていました。お母さんは疲れきって、冴えない表情をされていました。そして、リハビリに通うことになりましたが、当初、お母さんはリハビリ中に眠ってしまう様子が見受けられました。その後、お子さんが療育施設に通うようになり、お子さんと離れて少し休む時間が取れるようになり、お母さんの表情が少し明るくなってきた矢先、離婚されることになり、お母さんは仕事に就く必要が生じました。しかし、仕事ができるほど長時間預かってもらえる療育施設がなく、そのお子さんは止む無く施設に入所することになりました。
「重症心身障がい」とは、立つこと・話すことが難しい重複した障がいのある人を示す行政用語です。医学的原因は様々ですが、てんかんや摂食嚥下障がい、呼吸障がいといった様々な合併症を持っている人が多くおられます。生活面においては、24時間介護が必要な状況です。
重症心身障害児者の状況については、静岡県の平成27年度調査では2,021人が該当し、うち1,562人(77%)が自宅での生活を送られ、また、浜松市の平成28年度調査では、529人が自宅で生活されていました。
近年、医療の進歩に伴い、自宅で医療的ケア(経管栄養や気管切開、人工呼吸器管理等)を受けておられる人も増えています。18歳未満で医療的ケアを必要とする人は、浜松市内で平成24年は242人でしたが、平成29年には338人と5年で約1.5倍に増加しています。このなかには従来の重症心身障がいの定義から外れる「歩ける・話せるけど医療的ケアが必要なお子さん」も含まれており、医療の進歩に福祉制度が追いついていない現状があるため、利用できる制度がない、施設がない状況が課題となっています。
こうした課題に対応するため、国は平成24年から、静岡県は平成22年から様々な事業を行っています。浜松市も平成27年から、浜松市障がい者自立支援協議会に重症心身障がい児者部会の設置、教育委員会では、就学支援委員会の専門部会に医療的ケア運営協議会を設置し、調査や協議を開始しています。重症心身障がいの人や医療的ケアを必要とする人が安心して暮らせる浜松市を目指し、より一層の努力をしていきます。
注釈
リハビリテーション
障がいや病気、怪我及び老化現象等、様々な原因によって生じた心身の障がいに対して、その障がいが元の状態に戻るような訓練を行うこと。
重症心身障害児(者)
重度の身体障がい(肢体不自由)と重度の知的障がいとが重複している状態にある人。
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