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更新日:2021年4月15日

第2章 現状と課題2

2 障がい福祉施策を取り巻く状況

(1)共生社会の実現に向けて

1)ノーマライゼーションからインクルージョンへ

日本の障がい福祉施策は、歴史的に“入所が必要である”という保護的な考え方が優先され、入所施設の整備を中心に行われてきました。

昭和56(1981)年の“完全参加と平等”をテーマとする国際障害者年が一つの契機となり、障がいの有無にかかわらずだれもが住み慣れた地域の一員として暮らすことをあたりまえとするノーマライゼーションの理念に基づき、“施設から地域へ”という大きな政策の転換が図られることとなりました。

ノーマライゼーションの理念を踏まえ、平成15(2003)年に始まった支援費制度では、障がいのある人の自己決定によりサービスを選択できるようになりました。平成18(2006)年に障害者自立支援法が施行され、その後「障害者の権利に関する条約」(以下「障害者権利条約」)に掲げられたインクルージョンの理念を踏まえ、平成25(2013)年に障害者総合支援法が施行されました。これにより、サービスを受ける側の人の権利の確保とともに、地域での生活を支えるための支援が飛躍的に充実しました。

現在では、ノーマライゼーションとインクルージョンの理念は障がい福祉を支える理念として浸透し、自立と社会参加のための支援を基本とした、地域で生活していくためのサービスの充実や生活環境の整備が進められています。

2)共生社会の実現の重要性

障害者基本法の改正により、共生社会の理念が目的規定に追加されました。これは、地域社会は様々な人によって構成されていることが自然であり、障がいの有無にかかわらず、お互いの違いや多様性を認め合い、社会から孤立や排除されることなく、社会的に包み込む共生社会の実現を目指すものです。

すべての人がともに地域で暮らし、一人ひとりのニーズに応じた必要な支援が受けられる社会が求められています。それは、単に生活する場所としての地域を共有するだけではなく、お互いに福祉の受け手であり、担い手でもあるという認識のもと、社会的に地域でつながりを持つことが重要となります。

平成28(2016)年7月、神奈川県相模原市の障害者支援施設「津久井やまゆり園」で、施設の元職員が入所者等を殺傷する事件が発生しました。この事件は、全国に衝撃を与えるとともに、改めてすべての国民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現と、そのための国民の理解促進が重要であることを認識させるきっかけになりました。

3)社会モデルの転換

障害者基本法の改正により、障がいの定義が見直されました。個人の心身機能の欠如が障がいであると考えるのではなく、社会との関係の中で生じる社会的な不利も含めて定義する社会モデルを踏まえた考え方へと転換されました。

社会モデルへの転換により、障がいのある人の自立や社会参加を妨げている社会的障壁を除去し、改善していくことが求められています。

(2)地域共生社会の実現に向けた取り組み

平成28(2016)年6月に「ニッポン一億総活躍プラン」が閣議決定されました。この中で、地域の高齢福祉、子ども・子育て支援等、各制度の成熟化が進む一方で、人口減少、家族・地域社会の変容により、地域の人々が役割を持ち、支え合いながら、自分らしく活躍できる地域コミュニティを育成し、公的な福祉サービスと協働して助け合いながら暮らすことのできる「地域共生社会」の実現が必要とされています。

(3)障害者権利条約の締結と国際的な義務

我が国は、平成26(2014)年1月に、障がいのある人の権利及び尊厳を保護し促進すること等を目的とする「障害者権利条約」を批准しました。この条約は、障がいのある人の人権や基本的自由を確保し、障がいのある人の固有の尊厳の尊重を促進するために、障がいのある人の権利の実現のための措置等を規定しており、市民的・政治的な権利、教育・保健・労働・雇用の権利、社会保障、余暇活動へのアクセス等、様々な分野における取り組みを締約国に対して求めています。

(4)東京2020パラリンピック競技大会を契機とした取り組み

平成32(2020)年のオリンピック・パラリンピック競技大会の東京開催決定を契機として、障がいの有無等にかかわらず、だれもが相互に人格と個性を尊重し支え合う「心のバリアフリー」を推進することや、ユニバーサルデザインの街づくりを進め、共生社会を実現し、障がいのある人の活躍の機会を増やしていくことが必要です。

(5)新たな課題、多様化するニーズに対応するための予算の重点化

障害福祉サービスについては、障がいのある人の自己決定を尊重した制度への見直しを図るため、平成15(2003)年に支援費制度へ移行しました。

また、障がいのある人の自立支援や、安心して暮らすことのできる地域社会を実現するため、平成18(2006)年の障害者自立支援法の施行や、平成25(2013)年の障害者総合支援法の施行に伴い、障害福祉サービスの充実が図られました。

こうした障害福祉サービスが充実する中で、国と本市の障害福祉サービス関係予算は11年間で2倍以上(国 H19時05分,380億円→H29時01分兆2,656億円、浜松市 H19時80分.9億円→H29:187.3億円)となっている現状を踏まえ、新たな課題や多様化するニーズに対応した障害福祉サービスを実施するためには、既存事業の見直しを行う等、限られた財源を有効に活用する必要があります。

(6)近年の関連法令の動向

1)障害者差別解消法

平成25(2013)年6月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下「障害者差別解消法」)が制定され、平成28(2016)年4月に施行されました。

行政機関等及び事業者における「不当な差別的取扱い」の禁止や、「合理的配慮」の提供等、障がいを理由とする差別を解消するための措置等を定め、すべての国民が、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的としています。

2)障害者雇用促進法の改正

平成25(2013)年5月に障害者雇用促進法が一部改正され、雇用の分野での、障害者差別の禁止及び合理的配慮の提供の義務、相談体制の整備、苦情処理、紛争解決の援助が盛り込まれ、平成28(2016)年4月に施行されました。また、平成30(2018)年4月には、障がいのある人の雇用の状況に照らして、法定雇用率の算定の基礎に精神障がいのある人が加えられます。

3)成年後見制度利用促進法

成年後見制度の利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的に、平成28(2016)年4月に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」(以下「成年後見制度利用促進法」)が制定され、同年5月に施行されました。

4)発達障害者支援法の改正

平成28(2016)年5月に発達障害者支援法が一部改正され、発達障がいのある人に対する障がいの定義と発達障がいへの理解促進や、生活全般にわたる支援の促進、発達障がい者支援を担当する部局相互の緊密な連携の確保、関係機関等の協力体制の整備等が盛り込まれ、平成28(2016)年8月に施行されました。

5)障害者総合支援法の改正

平成28(2016)年5月に障がいのある人の生活と就労に対する支援の一層の充実を図ることを目的に、障害者総合支援法が一部改正され、平成30(2018)年4月より施行されることになりました。

6)児童福祉法の改正

平成28(2016)年5月に児童福祉法が一部改正され、居宅訪問により児童発達支援を提供するサービスの創設や保育所等訪問支援の支援対象の拡大、医療的ケアを要する障がいのある子どもに対する支援等が盛り込まれ、平成30(2018)年4月より施行されることになりました。

 

年月

障がい福祉施策の動向

平成17
(2005)年

4月

  • 発達障害者支援法の施行
    (発達障がいの定義、発達障がいへの理解促進、発達障害者支援センターの設置等)

平成18
(2006)年

4月

  • 障害者自立支援法の施行
    (就労支援の強化、障害程度区分によるサービス基準の明確化、サービス提供主体の市町村への一元化等)

12月

  • バリアフリー新法の施行
    (高齢者や身体障がいのある人等の移動の円滑化等)

平成22
(2010)年

12月

  • 改正障害者自立支援法の施行
    (利用者負担の見直し、発達障がいが対象として明確化等)

平成23
(2011)年

8月

  • 改正障害者基本法の施行
    (障がいのある人の定義の見直し、差別の禁止)

平成24
(2012)年

10月

  • 障害者虐待防止法の施行
    (虐待の分類、虐待を発見した国民の通報義務、市町村虐待防止センター・都道府県権利擁護センターの設置等)

平成25
(2013)年

4月

  • 障害者総合支援法の施行
    (難病患者を対象として追加、障がい者サービスの一元化、地域生活支援事業の追加等)
  • 障害者優先調達推進法の施行
    (国や地方公共団体による障害者就労施設等からの物品の調達の推進等)

平成26
(2014)年

1月

  • 障害者権利条約を批准

4月

  • 改正精神保健福祉法の施行
    (保護者制度の見直し、医療保護入院の手続きの見直し等)

平成27
(2015)年

1月

  • 難病法の施行(医療費助成の対象疾病の拡大等)

平成28
(2016)年

4月

  • 障害者差別解消法の施行
    (障がいのある人に対する差別的取扱いの禁止、合理的配慮の提供義務等)
  • 障害者雇用促進法の施行
    (雇用分野での障がい者差別禁止、合理的配慮の提供義務、法定雇用率の算定基礎に精神障がいのある人を加える)
  • 浜松市手話言語の推進に関する条例の施行

5月

  • 成年後見制度利用促進法の施行
    (成年後見制度の利用の促進のための基本計画の策定等)

8月

  • 改正発達障害者支援法の施行
    (ライフステージを通じた切れ目のない支援、家族等も含めたきめ細かな支援を推進、発達障害者支援地域協議会の設置等)

平成30
(2018)年

4月

  • 改正障害者総合支援法の施行
    (「自立生活援助」、「就労定着支援」の創設等)
  • 地域包括ケアシステムの強化のための改正介護保険法等の施行
    (地域共生社会の実現に向けた取り組みの推進等)
  • 改正児童福祉法の施行

法令等の名称は略称となっています。

 

注釈

国際障害者年

国際連合が指定した国際年の一つ。障がいのある人の「完全参加と平等」をテーマとして国際的な取り組みを行うため、単なる理念としてではなく社会において実現するという意図のもとに決議された。

ノーマライゼーション

年齢や性別、障がいの有無にかかわらず、お互い特別に区別されることなく、社会生活をともにすることが正常なことであり、本来の望ましい姿であるとする考え方。

障害者権利条約

あらゆる障がいのある人の尊厳と権利を保障するための人権条約。

インクルージョン

包み込むという意味で、障がいの有無にかかわらず、すべての人が社会の中で生活し、そのニーズに応じた地域生活支援を受けられるようにしていくこと。

社会モデル

障がいのある人が受ける制限は、心身機能の障がいのみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるとする考え方。

地域共生社会

制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が『我が事』として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて『丸ごと』つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会。地域共生社会の実現のため、介護保険法の一部を改正する法律により、社会福祉法の改正が行われた。(平成30(2018)年4月施行)

障害者差別解消法

すべての国民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障がいを理由とする差別の解消を推進することを目的として制定された法律。

合理的配慮

障がいの有無にかかわらず、すべての人が平等に社会参加できるよう、それぞれの障がいの特徴や困難等に合わせた配慮。

障害者雇用促進法

障がいのある人の雇用と在宅就労の促進について定めた法律。

法定雇用率

雇用する労働者に占める障がいのある人の割合。障害者雇用促進法では事業主に対して法定雇用率以上になるよう義務付けている。

成年後見制度利用促進法

認知症等で判断能力が不十分な人に代わり財産管理や契約行為を行う「成年後見制度」の利用促進を図ることを目的として制定された法律。

発達障害者支援法

発達障がいのある人の早期発見・早期療育や学校教育、就労支援等を行うことを目的とした法律。

障害者虐待防止法

障がいのある人に対する虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、障がいのある人の権利利益の擁護に資することを目的とする法律。

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