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更新日:2019年3月15日

第6章 全体計画(6)

6-6 事業別配慮方針

農業農村整備事業の推進に当たっては、6-1から6-5に示した考え方を踏まえ、『安全性』『経済性』『維持管理方法』など多方面の検討のもと、地域の条件に応じた柔軟な対応を基本として、環境との調和に配慮した事業を推進します。ここでは、「区画整理(ほ場整備)」「用排水路整備」「農道整備」「ため池整備」「集落環境整備」の各事業について、環境配慮の視点と方針を整理します。

(1)区画整理(ほ場整備)

区画整理は、農道、用排水路等の整備、暗渠排水、土層改良等の土地利用の秩序化を一体的に実施するなど、土地基盤の総合的な事業を行うものです。この事業は、広大な面的広がりをもって実施されるため、地域における自然環境や景観に大きな影響を与えるものです。
そこで、整備においては、地形改変に留意し、樹木、樹林等の緑地や良好な水辺空間を極力保全、再生するなどの自然環境の保全、創出を図るとともに、歴史、文化的な地域資源の保全、活用を積極的に行うことが重要です。
そのため、区画整理にあたっては、「多様な生息・生育空間の確保」「地形の保全」「水路と水田の連続性確保」「緑の保全と再生」「畑地における下流河川への土砂流出防止」に配慮することが重要です。

環境配慮の視点

方針

多様な生息・生育空間の確保

  • 生物の多様な生息・生育空間を確保するために河川と水路の連続性、湧水池の保全、隣接する樹林地との連続性確保などが必要です。
  • ビオト-プの池や水田、冬季湛水田の創出による生物生息空間の確保とともに水田周辺の承水路の整備などによる水田と周辺環境との連続性を確保するための対策を推進します。
  • 畑地においても樹林地などと接する部分では、道路側溝に小動物の脱出用スロープを設けるなど、周辺環境との連続性に配慮します。

地形の保全

  • 大規模な地形改変は、生物の生息・生育環境を大きく変化させるとともに、景観にも大きな影響を与えるため、区画形状・規模については、地形に応じた区画配置を基本とし、畦畔をとり除いて隣り合う区画を統合するなどして、大規模な地形の改変をできる限り抑制していきます。
  • かつての条里制の痕跡を残す地区では、区画の大きさ、方向性に沿わせるなどの配慮を検討します。

水路と水田の連続性確保

  • ドジョウやナマズなど、魚類の中には産卵など生活史の中で水田を生息場所として利用する種があるため、このような種の生息場所を確保するためには、水路と水田を行き来できるような対策が必要です。
  • 対象とする魚類が水田に遡上する時期(繁殖期)に遡上が可能な水量を確保した水田魚道の整備など、水路と水田の連続性確保を推進します。

緑の保全と再生

  • 畦畔や道路・水路の法面については、生物の生息・生育空間、移動経路として、さらには景観面からも重要な部分であることから、緑化を推進します。
  • 緑化植物の導入については、生物多様性保全の観点から地域に自生する在来の植物の植生を基本とします。(施工後の法面などの裸地には、外来種が進入しやすくなります。外来種が侵入した法面では、整備前と植生が変化し、そこに生息している昆虫などにも影響を与えてしまいます。)

畑地における下流河川への土砂流出防止

  • 畑から流出した表土は、排水路を通じて下流域の水質汚濁を引き起こし、生物の生息・生育環境に影響を与える恐れがあるため、必要に応じて縁辺部に植栽を配置するなどの対策を検討します。
  • 傾斜地の樹園地を中心として、チガヤ等の在来植物での草生栽培の導入などにより、土壌流亡の抑制を推進します。

【水田での取り組み】

既存の水田でも、市民参加等の手軽に対応可能な方法です。(出典:生態系保全の手引き~生きものの豊かな農村を目指して~滋賀県世代をつなぐ農村まるごと保全地域協議会)

名称

水田魚道の設置(間伐材の利用等)

地形条件

特になし

効果

水路と田んぼを結ぶことで、ドジョウやフナ、ナマズ等の魚類に産卵の場が提供でき、稚魚の生育の場も提供できる。

留意事項

水路内の構造物は通水阻害となるので、大雨時期の流量等を考慮するなど注意が必要である。管理者との調整が必要である。

維持管理

木材は腐敗が進むことから、定期的な補修が必要となる。

名称

水田魚道の設置(コルゲート管等)

地形条件

特になし

効果

水路と田んぼを結ぶことによって、ドジョウなどの魚類に産卵の場を提供でき、稚魚の生育の場も提供できる。

留意事項

コルゲート管(ポリエチレン波状管)はある程度自由にまげることができ、既設の一筆排水枡に取り付けることも可能である。水路内の構造物は通水阻害となるので、大雨時期の流量等を考慮するなど注意が必要である。管理者との調整が必要である。

維持管理

特になし

名称

水田内の避難場所(どんぶち等)

地形条件

特になし

効果

水田の一画に生き物の退避場所を設けたり、水田の縁に溝を掘ることで、中干しなどで落水した時の生き物の避難場所となる。

留意事項

耕作者の同意を得る。

維持管理

溝が埋まった場合の溝堀りや畦が崩れないよう管理する必要がある。

名称

冬水田んぼ(冬期湛水)の実施

地形条件

特になし

効果

冬期に田んぼに水を張ることで、冬場、浅い水面をエサ場として利用するカモやシギ・チドリなどの鳥類や、水生生物に越冬場所を提供できる。

留意事項

冬場(非かんがい期)の水の確保が必要となる。周囲の田んぼへ水漏れのないよう注意する。

維持管理

周囲の田んぼへ影響を与えないよう、畦の草刈りや、水張りの管理をする必要がある。

(2)用排水路整備

用排水路は、古くから水田を主体とした農業生産において、用水の導水路及び余剰水の排水路として重要な役割を担ってきました。また、洗い場や防火など地域の生活に密着した生活用水としての機能も持ち合わせています。さらに、水田と一体となって豊かな二次的自然環境を形成し、メダカやドジョウ、ヤリタナゴなどの魚類をはじめ、多様な生き物の生息・生育空間としての機能ももっています。そのため、単に農業用水利施設としてだけでなく、生物多様性の保全や農村コミュニティの再生の場としての利用に留意していくことが必要です。
そのため、用排水路整備にあたっては、「構造物としての基本的条件確保」「生物の生息、生育空間の確保」「周辺環境との連続性の確保」「環境に配慮した資材の採用」「その他の多面的機能(親水性や景観等)」に配慮することが重要です。

環境配慮の視点

方針

生物の生息、生育環境の確保
(緩急のある流速の確保)

  • 魚類などが水路の中で繁殖、生育、採餌、避難などの活動を可能とするためには、緩急のある流速を創り出すことが必要です。
  • 瀬や淵、ワンド水制工、置石などにより緩急のある流速の確保を推進します。

生物の生息、生育環境の確保
(多様な空間の創出)

  • 水路は、魚類などの生息場所であるため、植生や底質及び護岸の形状などにより多様な生息・生育空間を確保することが必要です。
  • 木工沈床、粗朶柵工、蛇籠・ふとん籠、石積水路、魚巣ブロックなどにより、様々な生息・生育空間の確保を推進します。

周辺環境との連続性確保
(上下流の連続性確保)

  • 魚類などの中には、生活史の中で河川と水路を行き来するものがあり、河川と水路の連続性を確保する対策が必要です。
  • 落差工を急流工(全面魚道)とするなど、上下流の連続性を考慮した工法を検討します。

周辺環境との連続性確保
(小動物の移動経路の確保)

  • 生物の生息場所に水路を整備する時は、物理的な障害(登れないなど)によって生物の移動経路を分断してしまう場合があります。
  • 林地等に接する部分では水路の護岸を自然石の緩傾斜護岸にする、水路にスロープを設置する等の周辺環境との連続性や小動物の落下防止・落下した場合の対策を推進します。

周辺環境との連続性確保
(低水期の生息・生育空間の確保)

  • 水路では、水管理による水量の減少や非かんがい期に水がなくなる場合もあります。
  • 年間を通じて水が確保されている場所とのネットワ-ク化を検討します。
  • 常時水深が確保できる避難場所を確保する必要があるため、水路内への深みの設置や排水路を拡幅して保全池を確保するなど、魚類が避難、越冬可能な空間の確保を推進します。
  • 関係機関との協議の上、農業用水の通年通水を協議・検討します。

環境に配慮した資材の採用

  • 水路と周辺環境との連続性を創出するため、石や木材等の自然素材での護岸整備を検討します。
  • 地域で確保できる自然素材により、周辺環境と調和性(景観形成)や低コスト化にも配慮します。

その他多面的機能
(親水機能の増進)

  • 水路は、集落内あるいは集落に接する部分で景観上重要な区間、あるいは敷地に余裕のある区間では、緩傾斜の法面や護岸と一体的に花壇・緑化ブロックを整備するなど、親水性の向上に配慮します。
  • 柵、ガードレールなどの水路付帯施設は、木製にするなど、その材質・色・デザインについて周囲への景観に配慮します。
  • 本市には円筒分水工など農業生産にとって重要な施設であり、地域の歴史や文化とも大きな関わりを持っている資源も見られるため、それら資源の有効活用を図り、その周辺を親水施設やポケットパークとして整備します。
  • 地域の歴史や文化を継承する場として、また地域にうるおいをもたらす空間として保全します。

その他多面的機能
(自然エネルギーの利用)

  • 農業水利施設を利活用する小水力発電により、土地改良施設の電力の一部を生み出すことが可能となれば、循環型社会の構築に貢献し、環境負荷の低減に繋がります。
  • 水利条件や地元合意が得られる状況であれば、小水力発電導入の検討も考慮します。

【水路での取り組み】

既存の水路でも、市民参加等の手軽に対応可能な方法です。(出典:生態系保全の手引き~生きものの豊かな農村を目指して~滋賀県世代をつなぐ農村まるごと保全地域協議会)

名称

水路底を掘り下げ、瀬・深みを設ける工法

地形条件

平坦地、傾斜地(比較的勾配があり、流速の速い水路に有効)

効果

魚類など水生動物の休息の場となる。

留意事項

  • 土砂の堆積に留意する必要がある。
  • 対象となる生物によって深さを調整する。
  • 魚類は、サギなどの外敵から身を守るために、「ひかげに」隠れる
  • 性質があるので、陰になりやすい側に寄せるとよい。

※水路内の構造物は通水阻害となるので、大雨時期の流量等を考慮するなど、十分に注意すること。管理者との調整が必要である。

維持管理

泥上げやゴミ拾いが必要になる。

名称

乱杭、置き石、浮き石の設置

地形条件

平坦地(勾配が緩やかな場所で有効)

効果

杭や石の周りに多様な流れができることで、休憩所・エサ場所を提供することができる。

留意事項

多様な流速を創り出すために、一律の間隔にならないようランダムに設置する。置き石は水流で移動しないよう大きめのもの(粒径100mm~)にする。
※水路内の構造物は通水阻害となるので、大雨時期の流量等を考慮するなど、十分に注意すること。管理者との調整が必要である。

維持管理

乱杭部分などにゴミが溜まることから、定期的なゴミ拾いが必要である。

名称

水制工

地形条件

平坦地(勾配が緩やかな場所で有効)

効果

流速に変化を与え、魚類等の休息の場となる。
水制工の後ろ側は小動物の休憩場所となりやすい。

留意事項

水制工部分にゴミが溜まりやすい。
※水路内の構造物は通水阻害となるので、大雨時期の流量等を考慮するなど、十分に注意すること。管理者との調整が必要である。

維持管理

定期的なゴミ拾い。

名称

木工沈床など(井桁沈床工)

地形条件

平坦地

効果

間伐材を格子状に組み、その中に割石、栗石、玉石などを詰めて水底に沈める。水中での木枠の中の隙間は、小型の甲殻類、稚魚、昆虫類のすみかとなり、魚類にとっては産卵場所、休憩場所となるほか、付着性の藻類がエサとなる。

留意事項

沈床工部分にゴミが溜まりやすい。
※水路内の構造物は通水阻害となるので、大雨時期の流量等を考慮するなど、十分に注意すること。管理者との調整が必要である。

維持管理

木枠は腐敗が進むことから、定期的な補修が必要となる。

名称

魚巣ブロック(置き石、U字溝の利用)

地形条件

平坦地、傾斜地

効果

魚類などの避難場所や休憩場所となる。

留意事項

あくまでも休憩場所であるので、周辺の河床がコンクリート等でエサの存在、産卵場所の確保等がされていないと、期待し効果を上げることは困難である。
※水路内の構造物は通水阻害となるので、大雨時期の流量等を考慮するなど、十分に注意すること。管理者との調整が必要である。

維持管理

定期的なゴミ拾い

名称

水路からの脱出施設(間伐材の利用等)

地形条件

平坦地、傾斜地

効果

水路に転落したカエルなどの脱出施設となる。

留意事項

流末の収集枡、合流枡などにも設置するとよい。
※水路内の構造物は通水阻害となるので、大雨時期の流量等を考慮するなど、十分に注意すること。管理者との調整が必要である。

維持管理

木材は腐敗が進むことから、定期的な補修が必要となる。
定期的なゴミ拾い

名称

セキ板、枕木による水深確保

地形条件

平坦地、傾斜地

効果

水路内に深みをつくることで、魚類など水生動物の休息場所を確保する。また、左右の高さを変えた枕木を設置し、流れに変化を与える。

留意事項

ゴミが溜まりやすい。
※水路内の構造物は通水阻害となるので、大雨時期の流量等を考慮するなど、十分に注意すること。管理者との調整が必要である。

維持管理

木材は腐敗が進むことから、定期的な補修が必要となる。

名称

上下流の連続性確保(階段魚道)

地形条件

落差の多い傾斜地で有効

効果

上下流の落差を小さくすることで、魚類の移動を確保できる。

留意事項

魚類は、サギなどの外敵から身を守るために、「ひかげ」に隠れる性質があるので、魚道も、陰になりやすい側に設置するとよい。対象となる魚の種類に応じて、魚道の幅や堰板の間隔、深さを工夫するとよい。
※水路内の構造物は通水阻害となるので、大雨時期の流量等を考慮するなど、十分に注意すること。管理者との調整が必要である。

維持管理

木材は腐敗が進むことから、定期的な補修が必要となる。


はいあがりネット
出典:農村環境整備センター

(3)農道整備

農道は、農業生産活動や社会生活活動などに供するための道路として、安全性や快適性、効率性などの基本的機能を有し、地域の産業、文化、経済活動に大きな役割を担っています。反面、農道周辺の生物の生息・生育環境に影響を与えています。
農道は、それ自体が生物の生息・生育空間となることは少なく、沿線の土地利用も必ずしも一様でなく水田や樹林地、集落などと変化する特徴を持っています。また、道路は動物の移動を妨げたり、車両の通行によるロード・キルの要因となることもありますが、一方で、法面や並木などの線的な緑地は、分断されたビオトープを連絡させる生息場所間の移動経路(エコロジカルコリドー)としての役割も担っています。
そのため、農道の整備にあたっては、沿線環境への影響の軽減を主目的として、「影響範囲の縮小化」「生物の移動経路の確保」「周辺環境要素との連続性の確保」などの環境保全対策を複合的に検討し、自然環境や農村景観の保全・改善・復元に配慮します。

環境配慮の視点

方針

影響範囲の縮小化

  • 良好な樹林地や水辺、湿地など保全するエリアを明確にし、動植物の生息・生育環境に配慮した路線選定を検討します。
  • 橋梁や高架橋、トンネルなどの採用、擁壁、補強土壁、桟橋などの採用などにより影響範囲の縮小化を検討します。

生物の移動経路の確保

  • 地域における生物の多様化が維持されていくためには、生物生息空間が独立又は分断されないことが必要であるため、生物が行き来できる移動経路を確保する必要があります。
  • 縦断方向については、道路沿いに中木、低木、草本からなる連続した緑地帯を確保し、横断方向については、横断管設置による移動経路の確保など生息地の分断解消を推進します。

周辺環境要素との連続性確保
(連続性の確保)

  • 種によっては、樹林地で生活し産卵のために水辺へやってくる生物も多く存在するため、樹林地や水田など各環境要素間の分断についても配慮する必要があります。
  • 水田や樹林地などの連続性を確保するために、落下防止用の蓋や這い出せる構造の水路などの検討を行い、小動物の移動を阻害しないための対策を推進します。

周辺環境要素との連続性確保
(沿道の緑化)

  • 農道沿いの中木、低木、草本からなる帯状のグリーンベルトや防風林は、生息場所間の移動経路(エコロジカルコリドー)として、重要な役割を担っています。
  • 植栽された防風林などは農村地域の良好な景観を構成する要素でもあるため、農道沿いは、既存の防風林やグリーンベルトなどの現状保存に努めるとともに、新たな緑地を設置し、まとまった緑地を結ぶエコロジカルコリドーの創出と良好な景観づくりを推進します。
  • 柵やガードレールなどの道路付帯施設は、景観上重要な区間では、その材質・色・デザインについて周囲の景観との調和に配慮します。

生物の生息場所の保護

  • 土羽や石積みなどの農道法面は、草地や多孔質の空間として昆虫類などの生息場所となるため、農道法面に現地で発生する石を利用した石積みを設置するなどにより、多孔質な空間創出を推進します。
  • 緑化植物の導入については、生物多様性保全の観点から地域に自生する在来の植物の植生を基本とします。

なお、計画策定には、事業内容、特性に応じ、ミティゲーション5原則*を活用し、動植物に配慮した路線選定や橋梁・高架橋・トンネル・擁壁などの設置、切土・盛土の縮小化など改変範囲の最小化に努めるとともに、動物の移動ルート確保や法面緑化、新たな生息・生育空間の創出、雨水の地下浸透への配慮など環境に与える影響への軽減策を講ずる必要があります。

【農道設計の検討(例)】
【農道設計の検討(例)】

■小動物が脱出できる構造の側溝
■小動物が脱出できる構造の側溝

■動物の移動のためのパイプカルバート
■動物の移動のためのパイプカルバート

出典:『環境との調和に配慮した事業実施のための調査計画・設計の手引き』農林水産省

(4)ため池整備

ため池は、長年にわたる稲作と人との関わりの中で形成されてきた歴史のある施設で、主としてかんがい用水に恵まれない地域を中心として整備された人工的な水域です。また、利水という本来の機能に加え、防災機能や生態系の保全、親水、良好な景観など多面的な役割を担っています。
ため池の水は、かんがい期の放水や翌年のための貯水など営農活動に利用され、水位が年間周期で大きく変動するという特徴を持っています。この水位変動や草刈、水抜き、浚渫などの人為的活動に対応した様々な植物、水生昆虫、魚類、両生類、鳥類などが生息・生育し、良好な二次的自然空間が形成されています。しかし、市内のため池の多くは、開発などによる緑地環境や水辺環境の減少により、ため池が周辺の環境要素から孤立し、多くの生物相の生息・生育環境としての機能が失われつつあります。そのため、ため池だけでなく樹林地や水路・河川、農地などとの有機的なネットワークを考慮した整備が必要になってきています。
ため池の整備(補修含む)の実施にあたっては、「生物の生息・生育環境の確保」「生態系を乱す外来種への対策」「周辺環境要素との連続性確保」「水質の保全」「その他多面的機能」から複合的に検討を行うことにより、自然環境の維持と親水空間の改善を進めます。

配慮事項の視点

内容

生物の生息・生育環境の確保

  • 生物の生息・生育に適した環境を確保するために、変化に富んだ水際の保全・形成、池の底面に凹凸を持たせる、水際を緩勾配にする、石や木杭などを用いた多孔質材料による護岸整備などの工夫を検討します。

生態系を乱す外来種への対策

  • 近年、オオクチバスやブルーギルといった外来種の移入により、在来の魚類などへの影響が問題視されているため、外来魚に対する移動の抑制や駆除など、外来種の拡散防止対策を推進します。
  • 池干しにより、外来魚を駆除します。また、池底を空気にさらし、水を入れ替えることで水質の改善やヘドロ対策につながり、生き物の生息・生育環境が改善されます。
  • 緑化植物の導入に当たっては、地域に自然に分布している在来種の利用を基本とします。

周辺環境要素との連続性の確保

  • ため池の周辺には、水田や水路、雑木林などが一体となって存在し、農村地域に生息する多くの生物は、その生活史に応じて様々な環境を利用しながら生活しています。
  • 樹木の枝の張り出しにより水面に日陰をつくることで、日射を和らげ、水温を低下させ、魚類や鳥類の休息場所を創出します。また、昆虫などの小動物の生息場所を提供するとともに、樹木から落下する昆虫は魚類のエサとなります。
  • 水域と周辺との連続性が重要であり、小動物の移動経路を分断させないような護岸や管理道、水路・側溝の工夫、水際の湿生植物の植生に配慮した護岸整備などを推進します。

水質の保全

  • 農業用水及び生物の生息・生育に適した水質の保全が必要であり、ヨシなどの水生植物や浮葉植物(浮島など)による水質浄化や清水の導水、周辺環境に調和した植林など、水質保全の対策を検討します。
  • ため池の機能維持に必要な底泥浚渫や水抜きは、時期や手法など、生態系に与える影響に十分配慮しながらすすめます。

その他多面的機能
(資源の再利用)

  • 堤体改修では、堤体の安全性を確保する他、地域で採取できる自然材料は、周辺環境と調和しやすく、工事費が安くなることもあります。
  • 改修で発生した石礫や浚渫土などを再利用し、廃棄物の発生抑制やコスト縮減に配慮します。

その他多面的機能
(親水性や景観などへの配慮)

  • 生物の生息・生育環境を確保すると同時に、人間が生き物と接する機会を創出するため、親水護岸の整備を推進します。
  • 休憩施設や散策路などの整備も検討します。
  • 石材や間伐材など自然材料の活用や堤体下流法面の緑化など、自然と調和した景観の創造に努めます。

【ため池での取り組み】

既存のため池でも、市民参加等の手軽に対応可能な方法です。(出典:生態系保全の手引き~生きものの豊かな農村を目指して~滋賀県世代をつなぐ農村まるごと保全地域協議会)

名称

置き石、浮き石の設置

地形条件

特になし

効果

置き石や浮き石を配置することで、生きものの生息空間(魚類等の産卵場所や避難場所)を確保することができる。

留意事項

置き石や浮き石に現地での発生材を利用する。
ヨシ等の植生を考えるときは、ため池全面に植生が拡がらないよう、塩ビ管などを埋めてその中に植生するとよい。

維持管理

ため池の水抜きを実施した際に、点検や補修をする必要がある。

名称

捨て石による緩傾斜護岸

地形条件

特になし

効果

既設護岸の前面に捨て石で緩傾斜をつくり、ヨシ等の植生により、生きものの生息空間(魚類等の産卵場所や避難場所)を確保することができる。

留意事項

緩傾斜護岸の範囲・傾斜角は、貯水量を考慮する。

維持管理

ため池の水抜きを実施した際に、点検や補修をする必要がある。

名称

浚渫土を利用した緩傾斜護岸

地形条件

特になし

効果

既設護岸部の前面に浚渫土などの土で緩傾斜をつくり、置き石や乱杭等で土留めし、植栽することで、生きものの生息空間(魚類等の産卵場所や避難場所)を確保することができる。

留意事項

緩傾斜護岸の範囲・傾斜角は、貯水量を考慮する。

維持管理

木材は腐敗が進むことから、ため池の水抜きを実施した際に、点検や補修をする必要がある。

名称

木柵護岸工

地形条件

山間部、丘陵地にある谷池

効果

木杭と木柵の護岸工法であり、木柵の間にヨシなどを植生することにより、生きものの生息空間を保護することができる。また、木材を用いるため、景観にも配慮できる。

留意事項

木杭や丸太に現地での発生材等を用いる。

維持管理

木枠は腐敗が進むことから、ため池の水抜きを実施した際に、点検や補修をする必要がある。

名称

井桁沈床工

地形条件

特になし

効果

間伐材を格子状に組み、その中に割石、栗石、玉石などを詰めて水底に沈める。
水中での木枠の中の隙間は、小型の甲殻類、稚魚、昆虫類のすみかとなり、魚類にとっては産卵場所、休憩場所となるほか、付着性の藻類がエサとなる。

留意事項

中詰めの石に現地での発生材を利用する。

維持管理

木枠は腐敗が進むことから、ため池の水抜きを実施した際に、点検や補修をする必要がある。

名称

魚巣ブロック(U字溝、置石)

地形条件

特になし

効果

魚類などの避難場所や休憩場所となる。

留意事項

置き石や浮き石に現地での発生材を利用する。

維持管理

泥に埋まってしまわないように、ため池の水抜きを実施した際に、点検する必要がある。

(5)集落環境整備

農村集落では、農地を基本に、浜松の気候・風土を背景とした生垣・防風林、神社仏閣などから構成された、うるおいとやすらぎに満ちた地域独自の空間が形成されてきました。集落環境整備は、集落道や農村公園をはじめ、集落排水、防災・安全施設、集落共同施設などの生活と密着した施設の整備を行うものです。
農村環境の整備にあたっては、「地域資源の活用」「ネットワーク化」「周辺景観との調和」などの配慮を多方面から検討し、うるおいとやすらぎのある集落環境の創出を進めます。

配慮事項の視点

内容

地域資源の活用

  • 地域づくりは、まず、地域を学び認識することからはじまります。多様な地域文化とふれあうことによる地域への誇りの形成など、地域意識を高めることが重要となります。
  • 自然環境や歴史など、地域資源を活用した多様なふれあい拠点、地域情報発信拠点づくりに努めます。
  • 道路境界や各施設の整備にあたっては、地元の石材や樹木など自然素材の活用を推進します。

ネットワーク化

  • 集落で、その集落活動、社会活動の核となる場所としては、神社や公民館、公園さらに里山、河川・湖沼などのオープンスペースなどがあげられます。こうした場所やそこまでの主要なアクセス道路は、各集落のシンボルとなるものであることから、シンボルにふさわしい景観整備に配慮していきます。
  • 集落の辻空間には、地蔵などの民俗史跡や保存樹林などがみられます。これら景観資源の保全などにより、集落の顔づくりをすすめていきます。
  • 集落道等の整備を実施する際には、これらのシンボルあるいは地域資源のネットワーク化に配慮してすすめます。

周辺景観との調和
(自然的要素)

  • 集落共同施設などの施設は、屋根を傾斜化し、マキ囲いするなど、風土や周囲の景観に配慮した整備を推進していきます。
  • 新たな施設や集落道を整備する場合には、画一的・直線的なデザインとなりがちで、景観的連続性を損なう恐れが増大するため、敷地境界周囲に低・高木(イヌマキ、マツ、ヤマモモなど)を植栽するとともに、施設の色・材料に配慮することにより、安定した景観づくりをすすめます。

周辺景観との調和
(建築物)

  • 地域性を出す構造物の一つとして、構造やデザインの両方から検討します。
  • 過度なデザインや色調は周辺景観から突出するなどの違和感を与えるため、周辺の環境や景観を考慮して検討します。
  • まちなみの中で、歴史的な風致の形成に寄与している用水路等の施設の整備や管理にも配慮します。

【景観への配慮(例)】

【景観への配慮(例)】


■水田と民家のマキ囲い,社寺林から構成される農村景観(積志地区)
■水田と民家のマキ囲い,社寺林から構成される農村景観(積志地区)
農村地域の様々な要素がのどかな農村景観を構成しています。


■三方原台地の赤土の畑と防風林が織り成す風景(三方原地区)
■三方原台地の赤土の畑と防風林が織り成す風景(三方原地区)
三方原の防風林は地域のシンボルであり,周辺農地を含めて農村景観を形成しています。

農村環境の総合的な整備を通じて、農村地域の生活利便性、快適性を高め、地域住民のみならず、新たな定住者を惹きつけられる魅力的な地域のイメージ形成を目指すことが重要です。

 

 

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浜松市役所産業部農業水産課

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