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更新日:2022年3月29日

第3章 地域の環境の評価(1)

3-1 環境資源別の評価

農業農村整備事業に関わる環境資源を、自然環境、社会環境、生産環境別に、保全すべき資源、または改善・復元すべき資源に分けて環境特性を整理しました。

表3-1 環境資源別の評価

自然環境【生物多様性】【景観】【自然循環機能】

環境資源

評価

環境特性

気象

国内有数の日射時間、遠州の空っ風
バイオマス

活用

本市は国内有数の日射時間を誇り、遠州の空っ風、多量かつ多様なバイオマスなどの豊富な新エネルギー源に恵まれています。太陽光発電、風力発電やバイオマスなどの新エネルギーの利活用は徐々に増加していますが、十分な導入量とはいえません。

地形

自然環境のネットワーク構成(地形、水系、植生)

保全

市域の北部・中部の山地から丘陵地にかけて広がる森林、天竜川沿いの自然、扇状地の水路網、遠州灘沿岸の自然、都田川・浜名湖の自然、浜名湖東岸の谷斜面の樹林、三方原台地崖線の斜面樹林、三方原防風林のまとまりなどが、本市の特徴的な自然環境のネットワーク構成です。このように多種多様な空間が入り組んでおり、生物の生息空間となっています。地域ごとに特徴ある自然景観を形成しています。

水環境

天竜川

保全

天竜川の中流部と支流を含む渓流には、アマゴ、イワナなどの魚類が生息しています。下流域は、砂礫河原が広がりコアジサシの営巣地、瀬はアユの産卵床として利用され、河口部の湿地にはヨシ群落が見られ、汽水性の魚介類も生息しています。支流には阿多古川、気田川、水窪川などの清流があります。

浜名湖

保全

汽水湖である浜名湖は、多くの魚類、甲殻類、貝類や水鳥などが生息する豊かな自然環境となっています。出入りの多い湖岸線をもち、周辺の森林、田園景観を背景に美しい景観が残されています。アンケート調査結果では、農村にある自然環境資源の中で最も誇りに思う資源として選ばれています。

都田川

保全

都田川ではヒヌマイトトンボやヤリタナゴといった、静岡県では他に余り見られないような種が生息するなど多種・多様な種の生息・生育環境を形成しています。

丘陵地、三方原台地縁辺の湧水

保全、改善、復元

丘陵地や三方原台地の裾には、豊富な湧水が見られ、下流の水路や湿地帯を含め、トノサマガエルやゲンジボタル、ドジョウなど豊かな生物相が見られます。しかし、周辺環境の変化などによって湧水量は減少しています。

遠州灘海岸

保全

中田島砂丘は市指定天然記念物のアカウミガメの産卵地、コアジサシの営巣地であり、海浜植物が見られます。美しい砂丘景観を形成しています。

樹林地

天竜区、北区北部の山林

保全、改善、復元

北部の山林は、本市のみどりの核であり、水源かん養、CO2吸収、土砂災害防止、生物多様性の保全など多面的な機能を持っています。そのほとんどは先人の努力により形成された天竜美林と呼ばれるスギ・ヒノキの植林で、一部には落葉樹と常緑樹の混合林が残っています。山林には哺乳類や猛禽類などが生息しています。
適切に手入れされた山林は美しい景観を呈していますが、手入れがいきとどかないため荒廃し、土砂流出やイノシシ、シカ、サルなどによる鳥獣被害の増加などの問題を引き起こす山林が増加しています。

県立森林公園

保全

広大な丘陵地にアカマツ林が広がっています。下草として暖地性植物が見られます。シラタマホシクサなどの湿性植生が見られます。

奥浜名湖の山林

保全

スギ・ヒノキの植林はあるものの常緑樹や落葉樹の二次林が残っており、比較的自然度の高い地域だといえます。マンサクやヤブツバキの群生地が残り、雨生山一帯の蛇紋岩地帯特有の草地はヒメヒカゲなどの固有種の生息環境となっています。

自然環境【生物多様性】【景観】

環境資源

評価

環境特性

樹林地

三方原台地縁辺部の斜面樹林

保全、改善、復元

天竜川河岸段丘の斜面樹林は、本市の南北をつなぐみどりの軸であり、三方原台地を刻む谷斜面の樹林は、市街地近郊の貴重な里山環境です。落葉樹・常緑樹の二次林が見られます。
これらの斜面樹林は、様々な生物の生息空間であるとともに、特徴ある農村景観を形成していますが、開発や手入れ不足により年々減少しています。

遠州灘の防風林
三方原防風林

保全、改善、復元

遠州灘海岸沿いのクロマツの防風林や砂丘列(どえ)は、先人たちの努力により守り育てられてきましたが、近年、松の劣化が深刻化しています。かつては、燃料や肥料とするため松の落ち葉かき(ごかき)により管理が行き届いていましたが、定期的に人の手が加えられなくなったことによる生育の阻害や松くい虫の発生が原因です。
三方原台地のアカマツ防風林も開拓の歴史を伝える資源ですが、同様に松枯れが進行しています。
これらの防風林は、防風林としての機能だけでなく、動植物の生息空間や本市の原風景の重要な要素となっているため、その喪失が問題となっています。

竹林

改善、復元

かつて竹林はタケノコ、竹材の生産に活用されてきましたが、輸入タケノコの増加やプラスチック製品の普及などにより価値が低下したため放置され、過密・拡大化の問題が生じてきました。放置された竹林は暗く、植生が単調になり、生物の生息環境として多様性に乏しくなります。テングス病にかかっている箇所も見られます。また、保水力が乏しいため、表土流出も懸念されます。放置された竹林は里山の樹林地に拡大しており、中山間地においては鳥獣被害を招く原因にもなっています。

社寺林、屋敷林、生垣等

保全

都市的地域では、本来の自然植生はほとんど見られませんが、一部は社寺林などとして残存しています。また、遠州地方特有の“空っ風”を防ぐホソバ(イヌマキ)垣の屋敷林は、特徴的な農村景観であると同時に、鳥類の移動や昆虫類が生息する飛び石状のコリドーとなっています。

社会環境【歴史・文化】【景観】【農村コミュニティ】

環境資源

評価

環境特性

社会環境 【歴史・文化】【景観】【農村コミュニティ】

観光レクリエーション資源

保全

市北部の山間地では、変化に富んだ山々、清流、棚田など豊かな自然環境を生かして、トレッキング、キャンプ、カヌー、釣りなどが盛んです。
静岡県の名勝である浜名湖を含んだ周辺地域は、県立自然公園に指定され、美しい景観と自然が保全されています。釣りや潮干狩りが楽しめます。三方原台地や浜名湖岸地域ではいちご、みかんなどを収穫できる観光農園があります。
これらの地域の多様な農林漁業、景観、歴史文化の資源を有機的に結び付たグリーン・ツーリズムを推進し、交流人口の拡大、地域の活性化が望まれます。

歴史資源

保全、改善、復元

条里制の跡が田の畦や水路、道路として残っている箇所があります。江戸時代には街道の一里塚や松並木が特徴的な農村景観を形成していました。現在でもその一部が保全されています。
天竜川や馬込川流域には、水と戦った農村の歴史を伝える景観が見られます。水利条件の悪い土地には、水田の中に島状に畑を作った島畑景観が残されていますが、ほ場整備や区画整理により減少しています。

伝統技術

保全

明治時代に全国に販路を拡大した遠州縞が、本市の伝統工芸として受け継がれています。

伝統行事

保全

農村では、農事暦に即した様々な年中行事が行われてきました。簡素化されたものもありますが人々の生活の中に根付いています。
アンケート調査結果では、誇りに思う農村の祭り・伝統行事の第一位に、遠州大念仏が選ばれました。五穀豊穣を願う神事や舞は、市内各地で受け継がれています。天竜区や北区引佐町では、神楽や田楽、ひよんどり、おくないなどの祭礼や農村歌舞伎などが伝承され、全国的に貴重な伝統芸能の宝庫となっています。しかし、担い手の減少が問題となっている地域もあります。

地域文化

保全

地域特有の自然環境の上に、山・海・街道や都市の特色ある暮らしが営まれ、多彩な食文化が育まれています。浜松の食文化と地域の産業を発展させるためのイベントが開催されています。地域に根付いた名称は、歴史文化を継承する大切なものです。
利便性や多様性が実現する一方で、家族で一緒に食卓を囲む機会の減少、伝統的食文化の喪失などの問題があります。また、中山間地域では、高齢化や過疎化の中で、地域活動の担い手が減少し、単一の集落だけではコミュニティ機能の維持が難しくなっている地域もあります。

市民活動

保全

市内では多くの市民団体が環境保全に関する活動を実施しています。
地域住民による農地・農業用水等の資源の適切な保全管理、農村環境の保全を目指した農地・水・環境保全向上対策の活動は、現在約20団体が活動を実施しています。また、中山間地域等直接支払制度を活用した取組も行われています。
地域外の多様な人々を加えた活動としては、市民、学校などのボランティアによるしずおか棚田・里地くらぶや、企業の社会貢献活動と連携する一社一村しずおか運動が行われ、都市との交流促進が図られています。
今回の市民アンケート調査で、よりよい農村環境をつくっていくために参加・協力したい活動をきいたところ、「市民農園や家庭菜園などでの野菜づくり、花づくり」、「草刈りや清掃活動などの環境保全活動への参加」「自然観察会など自然とふれあうイベントのへの参加」」など、回答者の8割を超える人が何からの活動に参加・協力したいと答え、農的生活へのニーズが伺えます。

生産環境【生物多様性】【景観】【自然循環機能】

環境資源

評価

環境特性

まとまりのある農地

保全

北区南部の樹園地、三方原台地から浜北区及び西区と南区の海岸部に畑地、北区都田川下流や天竜川扇状地に水田が分布しています。基礎となる周辺地形とともに保全が必要です。

主な農産物

保全

多様な地形と自然環境を有する本市は、多種多様な農業が営まれ、農業産出額は540億円で全国第4位です。品目別の農業産出額をみると、みかん、米、きく、肉用牛、メロン、茶(生葉)、生乳、鶏卵、ちんげんさい、かんしょ、豚、切り枝、ねぎ、ばれいしょ、セルリーの順になっています。特にみかんの産出額が圧倒的に高いことと、花き類の産出額が高いことが特徴です。

山間地の棚田

保全

都田川上流の中山間地には、歴史と文化を継承する棚田があり、美しい農村景観となっています。石積の自然石や積み方は地域ごとに特徴がみられます。土砂崩壊防止、洪水防止の国土保全機能を持っています。水生昆虫や両生類などが生息し、豊かな生態系を形成しています。地元組織と企業・都市住民との交流による棚田保全活動が行われています。一方、耕作放棄地が増加し、鳥獣被害の拡大が見られます。

山間地の茶畑

保全

山地の冷涼な気候を生かした山のお茶の産地です。地形に沿っているため表土の保全が図られます。山林に囲まれた傾斜地の茶畑・集落の景観は、地域固有の農村景観です。特に春野町は有機栽培茶の産地であり、協議会により様々な積極的な取組が行われています。一方、耕作放棄地が増加し、鳥獣被害の拡大が見られます。

三方原台地の畑

保全

三方原防風林に守られた畑では、赤土を生かしたばれいしょやだいこん等の農産物が生産されています。

三ヶ日のみかん山

保全、改善、復元

ホソバ(イヌマキ)垣や自然石の土留に囲まれたみかん畑は、特徴的な農業景観です。また、猪鼻湖を見下ろす眺望に優れた場所です。アンケート調査結果でも、誇りに思う資源に農地・里山の中で最も多く選ばれました。
しかし、土壌がむき出しとなる伝統的な清耕栽培であるため、表土の流亡や肥料の流出が下流域、最終的には猪鼻湖へ負荷を与えていることが問題となっています。園内の植生は単一的なものになっています。

谷津田

保全、改善、復元

三方原台地南端部や浜名湖東岸地域には、谷津田が残っている箇所があります。かつては、ため池、樹林地、谷津田が一体となって存在し、多様な生物生息空間となっていました。しかし、多くの谷津田が耕作放棄され、荒れた状態に変っています。

遠州灘海岸沿いの砂地の畑

保全

海岸林に守られた砂地の畑では、作物が埋まらないように砂を堆積させる堆砂垣を設置して、砂地特有のたまねぎ、エシャレット、かんしょ等の野菜を栽培しています。

耕作放棄地

改善、復元

生産性や効率性の追求、農業後継者不足などから、耕作放棄された農地が増加しています。農業の営みによって維持されてきた多様な環境が失われつつあります。

ため池

保全、改善、復元

ため池は、浜北区から北区の丘陵地、三方原台地の谷斜面に点在しています。稲作の人の関わりの中で、周囲の水田や樹林と一体となって、水生植物や水生昆虫、魚類などが生息する二次的な水辺環境を形成しています。
利水機能に加え、親水的な利用も見らます。中には外来種の放流により、在来種の減少が問題となる箇所もあります。

ほ場整備

改善、復元

土地基盤の総合的な整備が行われています。一般的に整備された農地は広大な面的な広がりを持ち、地域における自然環境や景観に多大な影響を与えました。大規模化による畦畔の消滅、水路のコンクリート化、パイプライン化、乾田化により、農地に生息する生物の減少を招きました。
そこで、地元住民の協力により、生物の生息環境や自然ネットワークの保全に配慮した多自然工法を用いた改修や、冬期湛水水田による餌場の確保などを計画している箇所もあります。

土水路、自然素材(自然石、木材)の水路

保全

わずかに残る土羽水路は、植物の生育場所として、また、両生類、は虫類、貝類などの産卵場所として貴重な空間です。また、自然石や木材の多孔質な水路も水生生物の生息環境や小動物の移動経路となっています。

コンクリート水路
パイプライン

改善、復元

コンクリート三面張やパイプラインによる画一的で直線的な整備により、管理が安易になった反面、生物の生息環境としての機能や水質浄化機能の低下、周辺に住む動物の移動経路の分断を招いています。また、ほ場整備や排水対策により水田と排水路、河川と排水路の落差が大きくなり、生物の行き来が分断されています。

乾田

改善、復元

水田の乾田化は、農業機械の利用や転作利用など生産性の向上に果たした役割は大きい反面、排水施設による土壌の乾燥化により田で冬を越していた生物や、水溜まりで産卵していた生物を減少させ、生息空間としての機能が低下しています。

畦畔

保全、改善、復元

土羽の畦畔は、草が覆い、水生昆虫の貴重な産卵の場となっています。一方、水田の大規模化による畦畔の減少や畦畔のコンクリート化が見られ、野草や昆虫類が減少しています。

未利用バイオマス

利用

農作物残さとしては、果樹剪定枝、稲わら、もみ殻などがあります。特に、果樹剪定枝は多くが農場で粉砕され土壌鋤込されていますが、堆肥化などの利活用方法を検討する必要があります。
かつて浜名湖の海藻(もく)を畑の肥料に利用したり、大量に獲れた小魚や貝殻を畑の土壌改良材として利用していました。これらは現在利用されていませんが、漁業と農業が連携する地域循環システムだといえます。

環境保全型農業への取組

改善、復元

農薬や化学肥料は、生産性の向上に果たす役割が大きい反面、必要以上の散布などにより環境負荷が増加し、有機的連携による物質循環が損なわれています。環境保全型農業への取組は、環境への意識の高い農家で行われていますが、十分とはいえない状況です。

身近な動植物

保全、改善、復元

農業の営みとともに農地には様々な動植物が生息してきました。特に水田や水路は、トノサマガエル、タガメ、ゲンゴロウ、ホタル、ドジョウ、メダカなどの多様な生物を育んできました。しかし、農業技術の近代化や外来種の影響などにより、生物が減少し、絶滅の危機に追い込まれているものもあります。アンケート調査結果をみても、生物の減少傾向や生物への関心が薄れてきていることがわかります。農業技術と生物の因果関係が明らかになっていないことも問題です。

 

 

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