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更新日:2022年3月29日

第2章 地域の現況把握(3)

2-3 社会環境

(1)地域指定

  • 天竜奥三河国定公園4,838ha、奥大井県立自然公園219ha、浜名湖県立自然公園8,332haが指定されています。天竜奥三河国定公園は、天竜川の中流部を中心として、その支流を含む河川渓谷からなる公園です。奥大井県立自然公園は大井川上流部の雄大な山々が連なっています。浜名湖県立自然公園は、出入りの多い湖岸線をもち、周辺の樹林、田園景観を背景に、美しい景観を呈するとともに、浜名湖の西方には優れた森林景観を呈しています。
  • 静岡県自然環境保全地域として、京丸岩岳山353ha、気田川856ha、渋川195haが指定されています。京丸岩岳山は、ブナを主体とした天然林と、国の天然記念物に指定されているアカヤシオツツジ、シロヤシオツツジが咲き乱れます。気田川は、クマタカなどの猛禽類が生息する野鳥の宝庫です。渋川は、県指定天然記念物のシブカワツツジが咲くほか、絶滅が危惧されるギフチョウとその食草であるヒメカンアオイが市の条例によって保護されています。
  • 天竜区、北区、浜北区の山林と、南区、西区の海岸林15,252.9haが保安林に指定されています。海岸保全区域は、443.4haが指定されています。
  • 浜松農業振興地域整備計画により、約12,421haの農地が農用地区域に設定され、基盤整備が実施されています。

国定公園、県立自然公園、静岡県自然環境保全地域

図2-6 国定公園、県立自然公園、静岡県自然環境保全地域

(2)地域指標

1)人口と世帯数

  • 人口は約82.4万人、世帯数は約31.8万世帯で、県下第1位の都市となっています(平成21年10月1日現在:住民登録、外国人登録による)。
  • 少子高齢化が年々進行し、平成12年以降は老年人口(65歳以上)が年少人口(15歳未満)を上回っています。このまま推移すると、平成27年をピークに人口は減少に転じると予測されています。

2)産業構造

  • 第1次産業の就業人口は、約2万人で、昭和60年以降減少傾向を示しています。
  • 本市は、輸送用機械機器などの製造業を中心とする第2次産業に、総就業人口の約37%が属しており、平成2年以降減少傾向にあるものの、全国平均と比較すると就業人口比率が高く、「ものづくり都市浜松」の特徴が表れています。

人口推移と将来人口予測

図2-7 人口推移と将来人口予測
資料:第2次浜松市総合計画

 

産業別人口の推移

図2-8 産業別人口の推移
資料:国勢調査

(3)土地利用

  • 本市の地目別面積をみると、森林が102,826haで最も多く市域の7割近くを占めています。農用地は13,461haで市域の8.9%となっています。
  • 土地利用の分布は、天竜区と北区の北部に森林、北区の南部に樹園地、西区の三方原台地から浜北区及び西区と南区の海岸部に畑地、北区の都田川下流や東区に水田が分布しています。
  • 農地転用が進み、農地は年々減少しています。また、都市部の人口の増加に伴う郊外へのスプロール的な宅地開発や樹林地の分断が進んでいます。
  • 新東名高速道路等の開通により、都市的土地利用の拡大が予想されます。

土地利用区分と構成比(平成19年)

表2-1 土地利用区分と構成比(平成19年)

 

農地転用面積の累計

図2-9 農地転用面積の累計

 

国土利用計画浜松市計画

図2-10 土地利用現況図
以上資料:国土利用計画浜松市計画

(4)歴史・文化

1)歴史

  • 本市の歴史は、本州で発見された唯一の旧石器時代の化石人骨である浜北人(上層人骨約1万4千年前、下層人骨約1万8千年前)に始まります。その後、市内各地で集落が形成されました。弥生時代になると、小区画を基本とした、水路を使って灌漑する稲作が普及しました。大きな環濠に囲まれた集落が形成され、耕地の開拓、用水の管理、戦争をとおして有力な指導者が現れ、「クニ」としてのまとまりができました。
  • 奈良時代にかけて、鉄製農具の普及や朝鮮から渡来した土木技術によって、ため池や条里の建設が進められました。市内には、条里制の跡が田の畦や水路、道路として残っています。
  • 平安時代になると、さらに大規模な開拓が起こり、優勢な寺社が所有する整然とした区画の荘園が成立しました。荘園には市場が誕生し、流通の拠点となりました。
  • 江戸時代の浜松は、東海道五十三次のほぼ中間の宿場として栄えました。西区の舞阪は今切渡しの渡船場の宿場町として栄え、北区の気賀には徳川家康によって姫街道(本坂通)の関所が創設されました。街道の一里塚や松並木が、特徴的な農村景観を形成していました。
  • 明治時代になると、水田を牛馬耕に適した長方形に整備し、暗渠を布設してかんがい排水を行い、畦や道路を整える畦畔改良が行われました。また、農業用水の公平な分配のため「円筒分水」といった分水工が整備されました。さらに、欧米の土木技術も導入され、外国人技師の技術指導を受けた金原明善は天竜川の直流化や三方原台地のかんがい計画を構想し、天竜川の治水工事や天竜区の山林の植林を行って、現在の天竜美林の礎を築きました。
  • 戦後になると、農業用水の確保や洪水調節、水力発電を目的としたダム建設が始まりました。水田は、ほ場整備によって大規模な排水施設が整備され、稲の品種改良も進み、米の生産量は向上しましたが、日本人の食生活の変化によって米の消費量が減少し、減反政策が行われるようになりました。さらに、高度経済成長により農地の転用が進み、減少していきました。

2)資源循環

  • 江戸時代の都市は、世界に類をみない衛生的な都市であったとされ、稲作を基調とした社会システムの中で、し尿や生ごみといった有機物が農村で肥料として土に還り、都市に残ることがありませんでした。一年の農業のサイクルに合わせた資源の有効活用が行われ、循環型社会が形成されていました。浜松城下の宿場町においても、便所の下肥や灰などを大八車や牛車で運搬し、周辺の農村部で肥料として利用していました。
  • 河川では水車で菜種や胡麻等から油を絞っていました。また、谷あいから出る水を堰き止めた樋池からも水を引いて水車を回し、製粉、精米、搾油、糸のくだ巻きなどが行われていました。
  • 三方原台地は、明治時代まで人が住んでいない松林やススキの原野でしたが、農耕用の牛馬が多く飼われるようになったため、飼料の供給源として重要視され、敷知郡、長上郡、豊田郡、引佐郡下の多くの人々が入会地として利用しました。
  • 庄内半島の村々は、浜名湖の海藻(もく)を畑の肥料にしていました。海藻は重要な肥料として盛んに利用され、もくを売って生計を立てる人もいました。
  • 南部の砂地の畑では、地引き網で大量に獲れたいわしを干した「干鰯」、「ナガラミ」という巻貝をすりつぶしたもの、大量のエビを腐らせたものなどを肥料にしていました。

昭和のはじめ頃の浜松平野の農事暦

表2-2 昭和のはじめ頃の浜松平野の農事暦
資料:博物館資料集2 米づくりの農具 浜松市博物館編

もく取り場の分割(左)、もく取りの道具「ねじざお」と「くまざら」(右)

図2-11 もく取り場の分割(左)、もく取りの道具 「ねじざお」と「くまざら」(右)
資料:博物館資料集3浜松の漁の道具浜松市博物館編

 

3)文化財

  • 現在、24件の国指定文化財、79件の県指定文化財、323件の市指定文化財があります。
  • 農村地域に関わる無形民俗文化財としては、遠州地方に広く伝わる遠州大念仏、その一派の呉松の大念仏、滝沢の放歌踊、寺野のひよんどりや西浦の田楽といった三遠南信地域に伝わる民俗芸能、農閑期の娯楽として行われた農村歌舞伎などがあります。
  • 民俗文化財に指定されたもの以外にも、年中行事として五穀豊穣を願う神事や舞などが各地域で受け継がれています。

表2-3主な無形民俗文化財

西浦の田楽

寺野のひよんどり

川名のひよんどり

懐山のおくない

勝坂神楽

神沢のおくない

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花の舞(川合)

花の舞(今田)

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浦川歌舞伎

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横尾歌舞伎

雄踏歌舞伎万人講

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遠州大念仏

呉松の大念仏

滝沢の放歌踊

西浦の念仏踊

主な歴史・文化に関する施設や伝統芸能

図2-12 主な歴史・文化に関する施設や伝統芸能
資料:浜松の旅サポートブック、浜松だいすきネット

 

4)多様な文化とその継承

  • 地域特有の自然環境の上に、山・海・街道や都市の特色ある暮らしが営まれ、うなぎ、ふぐ、お茶、みかん、地酒、遠州焼き等の多彩な食文化が育まれています。
  • 浜松の食文化と地域の産業を発展させるため、「農林水産まつり」、「浜松うなぎスタジアム」などのイベントを開催しています。また、浜松食育推進計画を策定し、「ふるさと給食週間」などの学校給食の地場産率の向上や、地域と連携した農林水産体験の実施、行事食や郷土料理といった食文化の継承を推進しています。
  • 中山間地域では、高齢化や過疎化の中で、地域活動の担い手が減少し、単一の集落だけではコミュニティ機能の維持が難しくなっている地域もあります。
  • 地域の歴史・文化に基づいた名称が残されています。

(5)景観

1)原風景としての多様な農村景観

  • 急峻な山岳地形から遠州灘の海岸部まで、本市には地形や気候風土に応じた多様な農村景観が見られ、原風景を形成しています。

 

2)減少する農村景観、原風景

  • 天竜区の山間地では、戦前まで焼畑が行われていました。集落周辺の里山は20年ぐらいのサイクルで管理され、雑木林、雑穀類の畑、根菜類の畑、牛飼いの放牧地など、多様な環境が分布し、生物相が豊かでした。
  • 戦後は、市域の7割を占める森林の大部分が「天竜美林」として知られるスギ・ヒノキの人工林となり、「天竜林業」と呼ばれる先進林業地、良質な木材の産地となっています。しかし、林業収入の減少による森林所有者の経営・管理意欲の減退や放棄によって、間伐などの適切な手入れが滞り、森林の公益的機能の発揮に支障をきたす可能性が心配されます。
  • 天竜川や馬込川流域には、水害と戦い続けた農村の歴史を物語る景観が見られます。流域の所々に、水利条件の悪い土地に多く見られる、水田の中に島状に畑をつくった島畑景観が残されていますが、ほ場整備(区画整理)により減少しています。また、ほ場整備に伴う乾田化、開発等により、ため池、遊水池、湿地、小川といった豊かな水辺環境も減少しました。
  • 遠州灘海岸には、クロマツの防風林と砂地の畑作景観が見られます。遠州灘の海岸は、16世紀後半から砂地の開拓や海岸防風林の造成が始まったと言われています。このような堤防は「どえ」(土居)と呼ばれ、集落に近い方から一番どえ・二番どえ・三番どえ・四番どえなどと呼ばれていました。各字で管理していた松林は、枝打ち、ごかき、下草刈りなどの作業を総出で行ったため、自然に管理が行き届き、砂地には「松露(しょうろ)」というきのこが生えて、「音羽松露」として明治時代の特産物となっていました。しかし、化石燃料の普及により松葉の需要が減少し、地域ぐるみの松林の管理が見られなくなりました。現在は松くい虫による松枯れが課題となっています。
  • 三方原台地には、アカマツ防風林と畑作景観が見られます。アカマツ防風林も、海岸のクロマツ林と同様の維持管理の課題を抱えています。また、戦後の三方原用水の整備によって、茶や馬鈴薯、大根などの栽培が盛んになり、遠州の空っ風と特産物の大根を組み合わせた漬大根のハザ掛け風景が姫街道沿いによく見られ、三方原の初冬の風物詩でしたが、現在はあまり見られなくなりました。

(6)観光レクリエーション

  • 本市には、山地から海岸まで様々な環境資源が存在するため、それらを生かした多様で豊富な観光レクリエーション資源があります。
  • 北部の山間地は、トレッキング、ハイキング、アユ釣りなどが楽しめるキャンプ場が整備されています。また、佐久間ダム、白倉峡など新緑や紅葉のドライブ、ツーリングスポットがあり、道の駅が整備され、地元の特産品が販売されています。大栗安の棚田、久留女木の棚田など、地域の特徴を活かした観光資源もあります。夏の天竜川は、アユ釣りの人々で賑わい支流の気田川や、くんまホタルの里、藤ノ瀬ホタル公園、的場などでホタルが見られます。
  • 浜名湖周辺は、マリンスポーツのメッカで、釣りや潮干狩りが楽しめます。みかん狩りを始めとする観光農園も多く、はままつフラワーパークでは花のウォーキング、はままつフルーツパークでは収穫体験ができます。
  • ものづくりの歴史や仕組みを楽しみながら学び、体験する産業観光が盛んです。醸造会社などの特産品の製造工程も見学できます。
  • 酒造や醸造会社、特産品の製造工程が見学できる産業観光が盛んです。
  • 豊富な観光資源を連携させ、地域に根ざした農業体験と合わせたグリーン・ツーリズム、旅行商品開発といった取組も行われています。
  • 本市では、人々の心へ快適さや豊かさを、また、街へ潤いや彩りを与える音、かおり、光を環境資源として捉え、「浜松市音・かおり・光資源百選」を選定しています。
  • 農村環境に関する資源としては、川や滝の水音、カエル・セミ・小鳥などの鳴き声、ツツジ・マンサク・桜・みかんなどの花のかおり、蛍の光などの自然環境資源や、獅子舞・お囃子・太鼓などの伝統芸能、新茶・アユ・キノコ・天竜美林・海苔・うなぎといった農林水産物が選ばれています。

主な観光レクリエーション施設

図2-13 主な観光レクリエーション施設
資料:浜松の旅サポートブック、浜松だいすきネット

(7)市民活動

  • 市内に主たる事務所を設置するNPO法人は185団体で、このうち70団体が環境の保全に関する活動を行っています(平成21年7月末現在)。
  • 農地・水・環境保全向上対策」は、平成19年度からスタートした制度で、農地・農業用水等の資源は、食料の安定供給や多面的機能の発揮の基盤となる社会共通資本であることから、これらの資源の適切な保全管理を行うとともに農村環境の保全等にも役立つ地域共同の効果の高い取組を促進しています。本市では22地区1,592ha、7,124名が参加しています(平成22年度現在)。例えば、三ヶ日町の大谷地区では、農地や法面の草刈りといった管理や水質調査、景観作物の播種、ビオトープづくりといった活動を実施しています。
  • 「しずおか棚田・里地くらぶ」は、農村コミュニティだけでは取組ができない地域に多様な人々を加えたボランティアを組織して活動するもので、浜松市では天竜区の大栗安、北区の久留女木が活動支援を受けています。天竜区大栗安の棚田では、「大栗安棚田倶楽部」による棚田の維持管理や休耕田の復旧、イベント開催など様々な活動が行われています。
  • 「一社一村しずおか運動」は、企業の社会貢献活動と農村コミュニティを連携するもので、平成21年度は県内で17地区20件の活動が認定されています。市内では、里山の保全や遊休農地の活用、地産地消の推進といった活動が、4地区(天竜区大栗安、天竜区下阿多古、北区引佐町渋川、北区引佐町西久留女木)で行われています。

大谷地区の農村環境保全活動

大谷地区の農村環境保全活動
資料:農地・水・環境保全向上対策ホームページ

 

 

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浜松市役所産業部農業水産課

〒430-8652 浜松市中央区元城町103-2

電話番号:053-457-2333

ファクス番号:050-3606-6171

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