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更新日:2020年9月18日

令和元年度 浜松市一般会計及び特別会計歳入歳出決算の審査意見1

第1 審査の基準

この審査は、浜松市監査基準(令和2年浜松市監査委員告示第2号)に準拠して実施した。

第2 審査の対象

  • 令和元年度浜松市一般会計歳入歳出決算
  • 令和元年度浜松市国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算
  • 令和元年度浜松市母子父子寡婦福祉資金貸付事業特別会計歳入歳出決算
  • 令和元年度浜松市介護保険事業特別会計歳入歳出決算
  • 令和元年度浜松市後期高齢者医療事業特別会計歳入歳出決算
  • 令和元年度浜松市と畜場・市場事業特別会計歳入歳出決算
  • 令和元年度浜松市農業集落排水事業特別会計歳入歳出決算
  • 令和元年度浜松市中央卸売市場事業特別会計歳入歳出決算
  • 令和元年度浜松市公共用地取得事業特別会計歳入歳出決算
  • 令和元年度浜松市育英事業特別会計歳入歳出決算
  • 令和元年度浜松市学童等災害共済事業特別会計歳入歳出決算
  • 令和元年度浜松市小型自動車競走事業特別会計歳入歳出決算
  • 令和元年度浜松市駐車場事業特別会計歳入歳出決算
  • 令和元年度浜松市公債管理特別会計歳入歳出決算

上記決算に関する証書類、歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書及び財産に関する調書

第3 審査の期間

令和2年7月1日から同年8月21日まで

第4 審査の着眼点及び実施内容

元年度一般会計及び特別会計の歳入歳出決算について、

  • 審査に付された決算書その他関係書類が適正に作成されているか
  • 決算書類に記載された計数は正確であるか
  • 歳入歳出予算は適正に執行されているか

を着眼点とし、検証した。

審査手続については、試査を基礎として行い、会計管理者が所管する諸帳簿と照合し、計数の確認のほか、関係職員から説明を聴取し、予算の執行状況等について審査を行った。

第5 審査の結果

1 審査結果

審査に付された各会計歳入歳出決算書、同事項別明細書、実質収支に関する調書及び財産に関する調書は法令に適合し、かつ、その計数はいずれも正確で、歳入歳出予算の執行はおおむね適正であると認められた。

2 予算の概要

(1) 当初予算の編成方針

元年度予算は、将来においても安定した財政を堅持し、かつ、真に必要な施策にしっかりと対応できるよう、以下の考えのもと、歳出の重点化、事業の廃止、見直し、合理化、効率化によるメリハリの効いた編成となっている。

  • 都市の将来像である「市民協働で築く『未来へかがやく創造都市・浜松』」、未来の理想の姿「1ダースの未来」の実現に向け、総合戦略に掲げた諸施策の着実な推進を図る。
  • 「戦略計画2019の基本方針」の重点化テーマ「持続可能なまちづくりへの挑戦」に基づき、「若者がチャレンジできるまち」「子育て世代を全力で応援するまち」「持続可能で創造性あふれるまち」を創る施策に重点を置く。
  • 歳入確保を徹底するとともに、事業の廃止、見直し、選択と集中による限られた財源の有効活用により、真に必要な施策、直面する行政課題に重点化したうえで、持続可能な財政運営に向け、中期財政計画に基づいてプライマリーバランスを堅持する。
  • 産業力の強化、子育て環境の向上、安全・安心・快適なまちづくり、環境負荷の少ないライフスタイルの定着や健康寿命の更なる延伸等、本市における優先課題への対応を的確に反映させる。

(2) 歳入歳出予算額

歳入歳出当初予算額は、一般会計が3,501億円、特別会計が2,176億3,700万円で、これに補正予算額及び前年度繰越額を合わせた予算現額は、一般会計が3,749億3,241万円、特別会計が2,168億1,000万円となっている。

3 決算の概要

(1) 決算規模

総計決算額

(単位 金額:千円、比率:%)

区分 元年度 30年度 増減額 対前年度比
歳入総計決算額  576,082,778 556,596,265 19,486,512 103.5
歳出総計決算額 562,999,559 542,601,334 20,398,224 103.8

(注) 本表に関する詳細は16ページ参照

元年度の決算規模は、一般会計、特別会計を合わせた総額で、歳入は5,760億8,277万円、歳出は5,629億9,955万円で、30年度に比べて、歳入が194億8,651万円(3.5%)、歳出が203億9,822万円(3.8%)それぞれ増加している。
これを決算収支でみると、歳入歳出差引額(形式収支)は、130億8,321万円の黒字、実質収支(形式収支から翌年度へ繰り越すべき財源を差し引いたもの)についても93億790万円の黒字となっている。元年度の実質収支から30年度の実質収支を差し引いた単年度収支では、30年度に比べて、7億6,720万円減少し、5億2,805万円の赤字となっている。

(注) 決算収支に関する詳細は18ページ参照

(2) 一般会計

一般会計の決算収支状況

(単位 金額:千円、比率:%)

区分 元年度 30年度 増減額 対前年度比
歳入決算額 (A) 359,365,816 338,913,362 20,452,453 106.0
歳出決算額 (B) 349,702,037 328,756,773 20,945,264 106.4
歳入歳出差引額
〔形式収支〕(A)-(B) (C)
9,663,779 10,156,589 △ 492,810 95.1
翌年度へ繰り越すべき財源 (D) 3,775,313 4,158,973 △ 383,660 90.8
実質収支 (C)-(D) (E) 5,888,466 5,997,616 △ 109,150 98.2
単年度収支 (F) △ 109,150 △ 438,322 329,172 24.9
積立金 (G) 21,249 24,550 △ 3,301 86.6
繰上償還金 (H) 20,000 0 20,000 -
積立金取崩し額 (I) 3,700,000 0 3,700,000 -
実質単年度収支(F)+(G)+(H)-(I) △ 3,767,900 △ 413,772 △ 3,354,128 910.6

(注) 本表に関する詳細及び注記は27ページ参照

一般会計における決算収支は、形式収支96億6,377万円、実質収支58億8,846万円の黒字となっているが、単年度収支1億915万円、実質単年度収支37億6,790万円のいずれも赤字となっている。
歳入決算額をみると3,593億6,581万円で、30年度に比べて、204億5,245万円(6.0%)増加している。歳入に占める経常的一般財源の構成比は52.4%で、30年度に比べて、3.1ポイント低下し、自主財源の構成比は53.9%で、30年度に比べて、0.2ポイント増加している。その根幹である市税収入は1,513億4,297万円で、30年度に比べて、19億9,922万円(1.3%)の増加となっている。市税の収入率は98.3%で、30年度に比べて、0.1ポイント上昇しており、収入未済額は23億3,289万円で、30年度に比べて、1億4,389万円減少している。
個人市民税は651億4,345万円で、30年度に比べて、24億7,469万円(3.9%)増加しており、法人市民税は120億5,207万円で、30年度に比べて、18億3,223万円(13.2%)減少している。また、固定資産税は544億7,015万円で、30年度に比べて、9億5,163万円(1.8%)増加している。
地方交付税は236億4,383万円で、30年度に比べて、8億7,202万円(3.8%)増加している。
一方、歳出決算額をみると、3,497億203万円で、30年度に比べて、209億4,526万円(6.4%)増加している。主として災害復旧費が12億5,075万円減少したものの、商工費53億6,203万円、教育費52億6,359万円及び民生費42億653万円の増加によるものである。
市債の借入額は394億610万円(借換債分50億円を含む)、元金の償還額は390億3,654万円であり、年度末未償還残高は2,805億4,501万円となり、30年度に比べて、3億6,955万円(0.1%)増加している。

(注)
  1. 歳入決算額の説明のうち経常的一般財源、自主財源及び市税に関する詳細は28ページ以降参照
  2. 歳出決算額の説明のうち災害復旧費、商工費、教育費及び民生費に関する詳細は40ページ以降参照
  3. 市債に関する説明の詳細は38ページ参照

(3) 特別会計

特別会計の決算収支状況

(単位 金額:千円、比率:%)

区分 元年度 30年度 増減額 対前年度比
歳入決算額 (A) 216,716,961 217,682,902 △ 965,941 99.6
歳出決算額 (B) 213,297,522 213,844,561 △ 547,039 99.7
歳入歳出差引額
〔形式収支〕(A)-(B) (C)
3,419,439 3,838,341 △ 418,901 89.1
翌年度へ繰り越すべき財源 (D) 0 0 0 -
実質収支 (C)-(D) (E) 3,419,439 3,838,341 △ 418,901 89.1
前年度実質収支 (F) 3,838,341 4,695,277 △ 856,936 81.7
単年度収支 (E)-(F) △ 418,901 △ 856,936 438,034 48.9

(注) 本表に関する詳細及び注記は54ページ参照

特別会計の歳入決算額は2,167億1,696万円、歳出決算額は2,132億9,752万円で、形式収支34億1,943万円、実質収支34億1,943万円の黒字となっているが、単年度収支4億1,890万円の赤字となっている。

(4) 普通会計

普通会計の決算収支状況

(単位 金額:千円、比率:%)

区分 元年度 30年度 増減額 対前年度比
歳入決算額 (A) 359,322,126 338,871,131 20,450,995 106.0
歳出決算額 (B) 349,574,500 328,646,519 20,927,981 106.4
歳入歳出差引額
〔形式収支〕(A)-(B) (C)
9,747,626 10,224,612 △ 476,986 95.3
翌年度へ繰り越すべき財源 (D) 3,808,367 4,199,277 △ 390,910 90.7
実質収支 (C)-(D) (E) 5,939,259 6,025,335 △ 86,076 98.6
単年度収支 (F) △ 86,076 △ 466,125 380,049 18.5
積立金 (G) 21,250 24,551 △ 3,301 86.6
繰上償還金 (H) 20,000 0 20,000 -
積立金取崩し額 (I) 3,700,000 0 3,700,000 -
実質単年度収支(F)+(G)+(H)-(I) △ 3,744,826 △ 441,574 △ 3,303,252 848.1

(注) 本表に関する詳細及び注記は20ページ参照

普通会計における決算収支は、形式収支97億4,762万円、実質収支59億3,925万円の黒字となっているが、単年度収支8,607万円、実質単年度収支37億4,482万円のいずれも赤字となっている。
普通会計における財政分析の指標となる指数、比率等は、財政力指数0.870、経常一般財源比率91.5%、経常収支比率92.7%、実質収支比率2.8%となっており、30年度に比べて、経常一般財源比率は改善したものの、財政力指数及び経常収支比率は悪化している。実質収支比率は30年度と同率となっている。

(注)
  1. 普通会計は、総務省が決算統計作成のため定めた基準によりまとめたもので、本市の場合は、一般会計と特別会計の一部(母子父子寡婦福祉資金貸付事業特別会計、公共用地取得事業特別会計、育英事業特別会計、学童等災害共済事業特別会計及び公債管理特別会計)が含まれる。
    なお、普通会計の数値は、各会計間の繰入れ、繰出しによる重複額等を控除した純計で算出している。
  2. 財政力指数、経常一般財源比率、経常収支比率及び実質収支比率に関する詳細は21ページ以降参照

4 審査意見

総括

一般会計決算における単年度収支及び実質単年度収支は赤字となったものの、実質収支は58億8,846万円の黒字となっている。
歳入は、主として各種交付金が減少したものの、国・県支出金、繰入金、市税等の増加により3,593億6,581万円となり、30年度に比べて、204億5,245万円(6.0%)増加した。根幹となる市税収入においては、個人市民税は給与総額、給与所得者等の増による増加、固定資産税は家屋の新増築及び企業の設備投資の増による償却資産の増加等により1,513億4,297万円となり、30年度に比べて、19億9,922万円(1.3%)増加する結果となった。
一方、歳出は、商工業振興施設整備基金積立金の増に伴う商工費の増加、船越小学校改築事業及び教室空調設備整備に伴う教育費の増加、幼児教育・保育の無償化制度開始に伴う民生費の増加等により3,497億203万円となり、30年度に比べて、209億4,526万円(6.4%)増加する結果となった。
特別会計決算における単年度収支は赤字となったものの、実質収支は34億1,943万円の黒字となっている。
歳入は、主として介護保険事業が増加したものの、国民健康保険事業の減少により2,167億1,696万円となり、30年度に比べて、9億6,594万円(0.4%)減少する結果となった。
一方、歳出は、主として介護保険事業が増加したものの、国民健康保険事業の減少により2,132億9,752万円となり、30年度に比べて、5億4,703万円(0.3%)減少する結果となった。
普通会計決算における財政指標はおおむね前年度並みとなったものの、主として経常収支比率が悪化し92.7%となり、30年度に比べて、2.9ポイント低下する結果となった。
市は、人口減少や少子高齢化が進展するなかで変化し続ける多様な行政課題に対し、SDGs推進の観点や戦略計画2020の基本方針に基づき、迅速かつ的確に対応していかなければならない。また、将来にわたる安定した財政運営に向けて、歳入確保を徹底するとともに、事業の見直しや選択と集中による歳出の重点化の強化を図っていくことが求められる。
以上の点を踏まえ、次の項目に留意し、継続的な改善と財政運営に取り組まれたい。

(1) 健全な財政運営の推進

【現状及び課題】

ア 普通会計における財政状況

  • 普通会計における歳入は、30年度に比べて、204億5,099万円(6.0%)増加した。主として国・県支出金、繰入金の増等によるものである。
  • 歳出は、普通建設事業費及び扶助費等の増により、30年度に比べて、209億2,798万円(6.4%)増加している。

普通会計における財政状況

(単位 : 千円)

区分 元年度(A) 30年度(B) 前年度との比較増減
(A)-(B)
歳入 359,322,126 338,871,131 20,450,995

市税

151,342,971 149,343,747 1,999,224

道府県民税所得割臨時交付金

- 1,929,308 △ 1,929,308

地方消費税交付金

14,630,038 15,756,199 △ 1,126,161

地方交付税

23,643,837 22,771,817 872,020

国・県支出金

78,430,377 69,447,978 8,982,399

繰入金

11,379,094 4,820,026 6,559,068

繰越金

10,223,274 8,370,183 1,853,091

市債

34,406,100 33,305,300 1,100,800

その他

35,266,435 33,126,573 2,139,862
歳出(性質別) 349,574,500 328,646,519 20,927,981

義務的経費

187,390,094 183,196,135 4,193,959

人件費

78,440,725 77,948,609 492,116

扶助費

71,371,278 67,652,840 3,718,438

公債費

37,578,091 37,594,686 △ 16,595

投資的経費

58,427,544 45,222,991 13,204,553

普通建設事業費

56,699,489 42,244,181 14,455,308

災害復旧事業費

1,728,055 2,978,810 △ 1,250,755

その他の経費

103,756,862 100,227,393 3,529,469

物件費

40,658,681 39,251,456 1,407,225

維持補修費

7,018,109 7,430,107 △ 411,998

補助費等

19,868,822 19,001,795 867,027

積立金

10,581,106 9,173,229 1,407,877

繰出金

24,347,210 24,047,360 299,850

その他

1,282,934 1,323,446 △ 40,512

(注) 千円未満を四捨五入して表示した。

  • 性質別歳出のうち義務的経費は、30年度に比べて、41億9,395万円(2.3%)増加している。これは、公債費1,659万円(0.1%)が減少したものの、扶助費37億1,843万円(5.5%)及び人件費4億9,211万円(0.6%)の増加によるものである。
  • 投資的経費は、30年度に比べて、132億455万円(29.2%)増加している。これは、災害復旧事業費12億5,075万円(42.0%)が減少したものの、普通建設事業費144億5,530万円(34.2%)の増加によるものである。
  • その他の経費は、30年度に比べて、35億2,946万円(3.5%)増加している。主として、維持補修費4億1,199万円(5.5%)が減少したものの、積立金14億787万円(15.3%)及び物件費14億722万円(3.6%)の増加によるものである。

イ 財政指標による分析

  • 普通会計における財政指標は、30年度に比べて、歳入構造の弾力性の指標である経常一般財源比率が0.2ポイント改善したものの、財政力を把握する指標である財政力指数は0.009ポイント、財源構造の弾力性の指標である経常収支比率が2.9ポイント悪化している。財政運営の健全化を示す指数である実質収支比率は同率となっている。
  • 経常収支比率は92.7%で、財政構造が弾力性を失いつつあるとされている80%を12.7ポイント上回っている。

財政指標の状況

(単位 比率 : %、比較増減 : ポイント)

区分 元年度(A) 30年度(B) 前年度との比較増減
(A)-(B)
財政力指数 0.870 0.879 △ 0.009
経常一般財源比率 91.5 91.3 0.2
経常収支比率 92.7 89.8 2.9
実質収支比率 2.8 2.8 0.0

(注) 財政力指数、経常一般財源比率、経常収支比率及び実質収支比率に関する詳細は21ページ以降参照

ウ 市債の状況

  • 元年度末における総市債残高は4,483億6,275万円で、30年度に比べて、92億1,781万円(2.0%)減少している。また、中期財政計画(27年度から6年度まで)の元年度末計画値4,653億円に比べて、169億3,724万円下回っている。また、市民一人当たりの市債残高も56万円で、中期財政計画の計画値である58.2万円以下を達成している。

総市債残高

(単位 : 千円)

区分 元年度(A) 30年度(B) 前年度との比較
増減(A)-(B)
前年度末総市債残高 (a) 457,580,575 468,140,723 △ 10,560,148
借入額 (b) 48,176,300 47,219,700 956,600
元金償還額 (c) 57,394,119 57,779,848 △ 385,728
年度末残高 (a)+(b)-(c) 448,362,756 457,580,575 △ 9,217,819
元金償還額-借入額 (c)-(b) 9,217,819 10,560,148 △ 1,342,328

(注) 年度末総市債残高は、満期時に一括して償還する市場公募債の償還準備のために行う減債基金への積立金を償還したものとみなしている。

市民一人当たり市債残高

(単位 金額:千円、人口:人)

区分 元年度(A) 元年度末
中期財政計画(B)
中期財政計画との
比較増減(A)-(B)
年度末市債残高 (a) 448,362,756 465,300,000 △ 16,937,243
人口 (b) 800,700 799,308 1,392
市民一人当たり市債残高/ (a)/(b) 560 582 △ 22

【意見】

  • 元年度末の市債残高は4,483億6,275万円、市民一人当たり市債残高は56万円で、ともに中期財政計画の計画値4,653億円、58.2万円以下を達成しており、堅実な財政運営を行っていることは評価できる。
  • 一方、普通会計における財政指標のうち経常収支比率は92.7%で、30年度に比べて、2.9ポイント悪化し、また、財政構造が弾力性を失いつつあるとされている80%を12.7ポイント上回っている。主として幼児教育・保育の無償化に伴う扶助費の増加等により、経常経費が増加したことによるもので、財政の硬直化が懸念される。
  • 新型コロナウイルス感染症対策経費や新清掃工場建設事業費等、今後、歳出の増加が見込まれるなかで、歳入においては市税の減少が予想される。財政課は、将来の財政需要の見込みを的確に把握するとともに、財政調整基金をはじめとする基金のあり方とその活用方法についても引き続き検討されたい。
    また、予算編成においてPDCAサイクルによる事業の見直しや選択と集中を更に徹底し、財政指標に留意しながら、今後も堅実な財政運営に取り組まれたい。

(2) 市税の収入率向上と適正な債権管理

【現状及び課題】

  • 元年度は、第5次市税滞納削減アクションプラン(元年度から6年度まで)(以下、「第5次アクションプラン」という。)の初年度であった。第5次アクションプランでは、税務行政の将来を見据えた中長期的な視点での取組を進めていくこととしている。
  • 第5次アクションプランでは、個人市民税の納期内収入率、累積滞納額及び現年分収入率について目標値を定めている。
  • 個人市民税の納期内収入率は95.18%で、30年度に比べて、0.15ポイント低下し、目標値に対しては0.20ポイント下回った。
  • 累積滞納額は30年度に比べて、1億4,389万円(5.8%)減少し、23億3,289万円まで削減された。目標値に対しては削減額が1億1,710万円上回った。
  • 現年分収入率は99.35%で、30年度に比べて、0.01ポイント低下し、目標値に対しては0.05ポイント下回った。
  • 不納欠損額は2億7,322万円で、30年度に比べて、4,269万円(18.5%)増加している。このうち、時効により消滅したものは、7,443件、9,234万円で、30年度に比べて、1,333件(15.2%)、1,744万円(15.9%)減少している。
  • 地方税の納税を地方公共団体や金融機関の窓口に出向くことなく、自宅やオフィスでパソコンからインターネットを通じて行うことができる地方税共通納税システムが、令和元年10月から稼働した。
  • 徴収担当職員の調査や滞納整理方針の決定に係る業務の効率化を図るため、蓄積された大量の情報を集約分析・可視化することで迅速な意思決定を補助するBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを、令和元年9月から滞納整理業務へ導入した。
  • 納付手段を多様化し、納税者の利便性向上を図るため、クレジットカード等収納を令和2年4月から開始している。
  • 今後、新型コロナウイルス感染症の影響による収入率の低下等に伴う税収の悪化が懸念される。

市税滞納削減アクションプランの推移

ア 個人市民税の納期内収入率

(単位 比率:%、比較増減:ポイント)

区分 元年度 30年度
実績値
(C)
比較増減
(B)-(C)
目標値
(A)
実績値
(B)
比較増減
(B)-(A)
納期内収入率 95.38 95.18 △ 0.20 95.33 △ 0.15

(注) 表中の数値は、第5次アクションプランの表記に倣い小数点第2位まで表示している。

イ 累積滞納額

(単位:千円)

区分 元年度 30年度
実績値
(C)
比較増減
(B)-(C)
目標値
(A)
実績値
(B)
比較増減
(B)-(A)
累積滞納額 2,450,000 2,332,895 △ 117,105 2,476,794 △ 143,899

ウ 現年分収入率

(単位 比率:%、比較増減:ポイント)

区分 元年度 30年度
実績値
(C)
比較増減
(B)-(C)
目標値
(A)
実績値
(B)
比較増減
(B)-(A)
現年分収入率 99.40 99.35 △ 0.05 99.36 △ 0.01

(注) 表中の数値は、第5次アクションプランの表記に倣い小数点第2位まで表示している。

市税不納欠損額の推移

(単位 金額:千円、比率・割合:%、件数:件、人数:人)

年度 不納欠損額の推移 うち消滅時効を事由とするもの
件数 実人数 金額 前年度比
(金額)
件数 金額 割合(金額)
27 23,443 6,879 443,807 92.9 14,146 157,373 35.5
28 31,629 6,776 494,714 111.5 10,850 118,846 24.0
29 20,668 5,087 293,779 59.4 7,539 87,892 29.9
30 14,565 3,865 230,522 78.5 8,776 109,788 47.6
18,790 4,247 273,221 118.5 7,443 92,340 33.8

【意見】

  • 滞納整理の徹底等により市税の累積滞納額が第5次アクションプランの目標値を上回り、着実に削減されていることは評価できる。収納対策課は、引き続き過年度分を含め計画的に徴収業務を継続するとともに、新たに元年度に導入したBIツールを活用し、徴収可否の判断を一層迅速に行い、更なる累積滞納額の削減に取り組まれたい。また、BIツール導入に対する目標を設定し、導入の効果を適切に評価することにより効率化を図られたい。
  • 個人市民税の納期内収入率及び現年分収入率については、それぞれ第5次アクションプランの目標値を下回るとともに、30年度に比べても低下している。市税の管理を担当する各課は、新たな納税手段である地方税共通納税システムやクレジットカード決済等の周知を強化し、収入率の向上に取り組まれたい。また、キャッシュレス決済が急速に普及しつつある昨今の状況において、手数料等の負担とのバランスを踏まえながら、新たな収納手段の導入についても検討されたい。

(3) 会計事務等における内部統制について

【現状及び課題】

  • 内部統制推進体制において、会計課は、会計事務、出納員事務の制度所管課に位置付けられ、会計事務マニュアルの整備や会計事務研修、出納員事務検査等を実施している。
  • 会計事務研修では、初任者研修、実務者研修及び外部専任講師による法務基礎研修を実施し、各所属の職員の会計事務能力向上に努めている。
  • 出納員事務検査では、収納金日計簿、物品出納簿等の書類の検査、現金や物品管理の検査を2年に1度全ての所属で実施している。
  • 支出に関する一連の事務については、会計課が支出命令書等の審査をすることで、適正な支出となるよう努めている。
  • 各所属に対する定期監査等において、会計事務、出納員事務の事務処理誤りが散見されることから、会計課は内部統制を推進することにより、各所属において事務処理誤りが生じないよう業務に取り組まなければならない。

【意見】

  • 内部統制における会計事務、出納員事務の制度所管課である会計課は、研修や出納員事務検査、支出命令書等の審査を行い、各所属が適正に会計事務、出納員事務を遂行できるよう努めている。しかしながら、各所属において事務処理誤りが散見され、結果として決算に影響を与える可能性も想定される。
    会計事務、出納員事務の事務処理誤りのリスクを回避するため、調定事務を含めるなどの研修の方法や対象者、出納員事務検査の方法について十分に検討されたい。
  • 会計事務、出納員事務において、各所属が所属長の統制のもと責任を持ち業務に取り組まれるよう内部統制を推進されたい。

(4) 森林環境譲与税の使途等について

【現状及び課題】

  • 森林環境譲与税は、森林の整備に関する施策、森林の整備を担うべき人材の育成及び確保、森林の有する公益的機能に関する普及啓発、木材利用の促進等に充てることとされており、私有人工林面積、林業就業者数及び人口を基に按分され、元年度に都道府県や市町村に対する譲与が開始された。また、税の適正利用が担保されるよう、使途については、インターネットの利用等により公表しなければならないとされている。
  • 元年度の森林環境譲与税の額は1億2,134万8,000円であり、農林水産業費に1億2,124万8,000円、衛生費に10万円それぞれ充当された。
  • 農林水産業費に充当された1億2,124万8,000円のうち、3,188万7,000円は森林環境基金に積み立てられた。
  • 元年度の森林環境譲与税の額の約4割が新規事業及び拡充事業に、約6割が既存事業及び基金への積立てに充当された。
  • 2年度当初予算における森林環境譲与税は2億5,700万円で、農林水産業費だけでなく民生費及び衛生費に充当されている。
  • 林業振興課は、林業関係者等の意見を反映させた森林環境譲与税活用計画を策定するため、「浜松市森林・林業未来構想会議」を令和2年4月に設置した。

【意見】

  • 元年度は、既存事業及び基金への積立てに森林環境譲与税の額の約6割が充当された。
    今後においては、財政課及び林業振興課は、森林環境譲与税の趣旨に鑑み、市全体の取組として積極的に新たな事業や既存事業の拡充等を行い、森林環境譲与税を政策的かつ計画的に活用されたい。

(5) 幼児教育・保育の無償化について

【現状及び課題】

  • 令和元年10月1日から認定こども園、幼稚園、保育所等の利用料が無償化された。
  • 無償化に伴う施設への利用料や副食費の給付事務の仕組みは、認定こども園、幼稚園、保育所等の施設によって異なり、複雑な状況である。
  • 幼児教育・保育課では、無償化のための「子ども・子育て支援法の一部を改正する法律」の成立から施行まで5か月弱の短期間での準備に加え、新たに必要となった私立幼稚園利用者の施設等利用給付認定作業、保護者や施設関係者に対しての説明等により30年度に比べて時間外勤務が大幅に増えている。
  • 幼児教育・保育課は、元年度の無償化に係る事業費について、無償化が導入されなかった場合と比較した影響額を算出している。

【意見】

  • 幼児教育・保育の無償化に伴う給付事務の仕組みが複雑であることや時間外勤務が増加している状況においては、事務処理ミスにつながる可能性が懸念される。幼児教育・保育課は、給付事務の仕組みの簡素化やシステムの見直し等を検討し、事務の正確性及び効率性の確保に取り組まれたい。
  • 幼児教育・保育の無償化は事業規模が大きいことから、幼児教育・保育課は関係部署と連携して、決算額の精査や分析を行うことで、今後も、市の財政への影響を適切に把握するよう努められたい。

(6) 母子父子寡婦福祉資金貸付事業制度の周知について

【現状及び課題】

  • 母子父子寡婦福祉資金貸付事業は、母子及び父子並びに寡婦福祉法に基づき、母子家庭等の経済的自立支援と子どもの健やかな成長を目的として、必要な資金の貸付けを実施している。
  • 貸付金の資金種別は12あり、種別ごとに貸し付けできる額及び償還期間等が異なる。
  • 資金種別ごとの貸付状況は、修学資金や就学支度資金は多く利用されているが、事業継続資金や就職支度資金等利用されていないものも見受けられ、過去5年における貸付者数は、年々減少傾向にある。

貸付及び償還状況の推移

  • 子育て支援課は、学校を通じた保護者に対する制度概要の案内や子育て情報サイトへの掲載等制度の周知に努めている。
  • 令和2年4月1日に施行された大学等における修学の支援に関する法律による授業料等減免や学資支給(給付型奨学金の支給)の利用が増えることが予想されるため、今後も貸付者数の減少が見込まれる。
  • 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、母子父子寡婦福祉貸付事業を取り巻く環境の変化が想定される。

【意見】

  • 母子父子寡婦福祉資金貸付事業に関し、貸付者数は年々減少傾向にあるなか、資金種別のうち利用が多い修学資金については、新たな修学支援制度による給付型奨学金の利用が増えることが予想されることから、今後も減少が見込まれる。しかしながら、社会を取り巻く環境が変化するなか、多様な資金種別のある本制度の役割は、依然として大きいものがあると考える。
  • 子育て支援課は、制度を周知するため学校を通じた保護者に対する制度概要の案内や子育て情報サイトへの掲載等に取り組んでいるが、本制度を必要とする市民に広く行き届くよう更なる周知の方法を検討されたい。

(7) 駐車場経営計画(第2期)の総括について

【現状及び課題】

  • 元年度は、ザザシティ駐車場建設事業債の償還が完了する4年度までの各駐車場の最終方針等を定めた駐車場経営計画(第2期)の最終年度であった。
  • 指定管理者から市へ納付された元年度の駐車場事業納付金は3億9,539万円で、30年度に比べて、865万円(2.1%)減少している。これは、新型コロナウイルス感染症の影響による令和2年3月の各駐車場の利用料金収入の減少等によるものと推測されるが、計画額に対しては、5,419万円上回った。
    また、同計画の期間中における駐車場事業納付金の合計は18億2,060万円で、計画額の合計を1億4,360万円上回った。
  • 同建設事業債の償還元利金に対する元年度の一般会計繰入金は1億5,670万円で、30年度に比べて、284万円(1.8%)減少し、計画額を3,709万円下回った。
    また、同計画の期間中における一般会計繰入金の合計は8億8,112万円で、計画額の合計を1億883万円下回った。これは、建設事業債償還元利金に対する一般会計からの繰入金の負担割合を、30年度以降50%から40%に縮小したことによるものである。

駐車場事業納付金及び一般会計繰入金の推移

(単位:千円)

区分 27年度 28年度 29年度 30年度 元年度 合計
駐車場事業
納付金
計画額 322,200 331,200 341,200 341,200 341,200 1,677,000
実績額 322,301 338,542 360,321 404,045 395,392 1,820,601
差引額 101 7,342 19,121 62,845 54,192 143,601
一般会計
繰入金
計画額 202,097 200,084 198,031 195,939 193,805 989,956
実績額 202,096 182,580 180,186 159,552 156,707 881,121
差引額 0 △ 17,504 △ 17,845 △ 36,387 △ 37,098 △ 108,835
  • 同計画の後継計画である「浜松市駐車場経営戦略(2年度から4年度まで)」において、各駐車場の収支見込みや役割を改めて総合的に検証し、5年度以降の中長期的な駐車場の運営に取り組むとしている。

【意見】

  • 駐車場経営計画(第2期)の計画期間において、指定管理者から市へ納付された駐車場事業納付金は、計画期間を通じて計画額を上回った。また、ザザシティ駐車場建設事業債の償還元利金に対する一般会計繰入金は、計画期間を通じて計画額よりも削減するなど一定の成果を上げていることは評価できる。
    交通政策課は、今後も利用者の利便性向上を図るとともに、収益等を把握・分析のうえ、駐車場事業の健全な運営に取り組まれたい。
  • 5年度以降の中長期的な駐車場運営のために策定した「浜松市駐車場経営戦略(2年度から4年度まで)」に基づき、社会情勢、利用予測、収支見込み、大規模改修に伴う財政負担、役割等を改めて分析したうえで、市営駐車場の今後のあり方を総合的に検証されたい。

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