緊急情報

サイト内を検索

ここから本文です。

更新日:2024年1月18日

地域を輝かせる小さな花

地域を輝かせる小さな花

上は85歳、下は63歳そばで地域を元気に(PDF:360KB)

9月下旬、佐久間町浦川地区を車で通ると、どのくらいの広さであろうか、サッカーコート2面ほどの畑で、白い小さなそばの花が、真っ赤な彼岸花と競演しているかのように咲き誇り、朝露に太陽の光を浴びキラキラと光り輝いていた。

白い小さな花

この畑でそば栽培をしているのが、佐久間町の県道水窪羽々庄佐久間線沿いにある北条峠で「そば処北条峠」を経営している野田やまびこ会の人たちだ。
お店を開いたのは平成2年、この地域は古くから各家庭でそばの栽培をしていたが、自家消費が主で、そばを提供するお店も無かった。地域の活性化を目的に、当時の佐久間町の協力もあり女性たちが立ち上がり、開店させた。当初は、お店ですべて提供できるまでの収穫量はなく、県外からそばの実を購入し、そばを提供していた。
当時、佐久間町では「そばの里づくり事業」として遊休農地を活用して、そば栽培を推進していた。そこへ野田やまびこ会に白刃の矢が立ち、平成8年から遊休農地でのそば栽培が始まった。
今ではこの畑以外にも町内での栽培を拡大し、お店で提供するそばは”ほぼ佐久間町産”と、野田やまびこ会の代表を務める鎌倉亀代さんは少し自慢げに言う。確かに今の時代において、国産で、しかも地元産なんて、素晴らしいと思う。

地域の情熱

この畑でそばの栽培に取り組む鎌倉さん。
後日取材を申し込むために電話をすると、二つ返事で許可が出た。
電話の向こうでは何やら騒がしい。その日は台風と秋雨の合間をぬって、あのそば畑でそば刈をしている真っ最中とのこと。今から取材へ向かうことを鎌倉さんに伝え、天竜区役所から車でおよそ70分、秋晴れの中、足早に車を畑へと走らせた。
あの畑一面、白い花で埋め尽くされていた畑が、大げさかもしれないが黄金色に見えた。車から降り、カメラの準備をしていると、「今日は暑いねぇ」と遠くから話しかけられ、振り返ると道端の畑からヤッケを着て、麦わら帽子姿のお母さんが、額の汗を拭っていた。
畑には同じくヤッケを着て、農作業帽子を被ったお母さんたちがもくもくと作業をしていた。
取材の準備をして畑に降りると、最初にあいさつをしてくれたお母さんは3mほどの高さはある「はざ」に登り、手際よくわらで束ねられたそばを掛けている。これは”はざがけ”と呼ばれるそば作りの手法だ。
帽子を覗きこむようにしてみると、なんと鎌倉さんだった。手を休めることなく一心に作業へと取り組むその額には、秋の日差しを受け、光るものが滴り落ちてくる。
こう言っては失礼かもしれないが、畑で作業している人は皆、お母さんばかり。恐る恐る鎌倉さんに会員の年齢を聞くと、ためらいなく「下は63歳」畑の一角を差し「あそこで作業している人が一番上で85歳」と教えてくれた。「昭和58年にやまびこ会を作ってから、もう35年経つからねぇ、みんな歳をとったよ」と笑いながら教えてくれた。
鎌倉さんに今年のそばの出来を尋ねると、「今年は最高」と声を張り答え、12月になればそば処北条峠で新そばを食べられるからおいでねと言われ、図々しくも取材をお願いした。

12月のある日

北条峠にチラチラと雪が舞う中、作業小屋では、そばの乾燥作業の真っ最中。
雪に濡れないように慌ててそばの撤収をしている人や、営業日に備えて仕込みをしている人が、慣れた手つきでもくもくと作業をしていた。
鎌倉さんは「脱穀したてだからこれだけでも良い香りがするよ」と、玄そばから脱穀したばかりのそばを準備して見せてくれた。鼻を近づけると、そばのやさしい香りがした。
すぐにそばを打つから待っててと言って、こね鉢のそば粉に水を回し手際良く、練り上げていく。
めん棒に巻き付けたそばを小刻みにトントントンと、のし板に打ち付けながら伸ばしていくのが北条峠流と言う。鎌倉さんと会話をしているうちに切り揃えられたそばが出来上がっていく。

未来への輝き

新そばのそば粉はうっすらと緑色をしており、茹で上がりざるに盛られたそばは何とも言えない輝きを放っていた。
その輝きは、単なる打ち立てではなく、山間部でたくさんの太陽の光を浴び、野田やまびこ会のお母さんたちが、額からたくさん汗を流し、作業した愛情の賜物かと思った。
いや、そばがこの地で暮らす人を輝かせるために光っているのかもしれない。
こんな光景をいつまでも残したいと思いつつ、最後はおいしい新そばを辛めの汁に少しつけ、腹いっぱいになるまですすり続けた。

 

てんりゅう暮らしの見本帖vol.4へ戻る

 

このページのよくある質問

よくある質問の一覧を見る

お問い合わせ

浜松市役所天竜区区振興課

〒431-3392 浜松市天竜区二俣町二俣481

電話番号:053-922-0011

ファクス番号:053-922-0049

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?