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更新日:2019年3月31日

井戸水で野菜を洗う人

「世代が変わっても、変わらない絆がここにはあるんですよ」(PDF:182KB)

幼少期の思い出

絣の着物を着てモンペ姿で過ごした子どもの頃の情景を、小塩さんは今でもよく思い出すという。「お手伝いで、清水井戸から家のカメに、バケツで水を運んでね」どの家も、それが子どもの仕事だったという60年ほど昔のことを、懐かしそうに話しはじめた。

昔は家の中に水道がなかったため、この井戸水を生活用水として、今の水道水と同じ感覚で使っていたという。「そろそろ自分の番かなあと、家の中から様子を伺っていましたよ」混み合っている時は、水源が空くまでそうして待ち、洗濯物や野菜を洗ったり、果物を冷やしたりするだけでなく、お茶をいれ、お米をといで炊くことにも使っていたそうだ。

「もう随分昔からあるけど、私が知っている限り、渇水期でも枯れたことはないし、水量が少なくなった時でも出続けていたわねえ」そう記憶をたどって教えてくれた。

井戸が果たしてきた役割

集落の女性が入れ代わり立ち代わり、洗濯物をすすいだり野菜を洗ったりの水仕事をするこの井戸は、女性たちの集会所であり、たまり場であり、まさに井戸端会議の場だったという。

「母親からこんな話を聞きました」お嫁さんのことを話すお姑さん、嫁ぎ先のお姑さんのことを話すお嫁さん。小塩さんのお母さんは、よく相談相手になっていたそうだ。たまたま両者の間に入って聞いてしまっても他言しないという信頼関係の中で、ここは日常の悩みを相談できる唯一の場所なんだよ、と教えられたそうだ。「家族をつなげ、地域もつなげる。大事な水源であること以上に、そんな役割を果たしてきてくれたこの井戸は、集落にとって重要なものだと思うの」

春夏秋冬 暮らしに密着

井戸水は、夏は冷たく、冬は温かい。手に触れる水が冷たく感じ始めたことでそろそろ夏が来ることを、ぬるく感じ始めることで冬が近づいたことを、季節の変わり目が井戸水によって体感できるんだ、と小塩さんは笑って言った。

『掛造り』といわれ、この地域独特の建て方になっているご自宅に伺わせてもらった。自動車が行き交う道路に面した玄関を入ると階段があり、階下の空間へと続く。物置などにして使っているそうだが、その階にある出入口は裏へと通じている。「ここは、ひんやりして冷蔵庫みたいなのよ」道路側の地下部分にあたる石積みに触れてみると、確かに冷たい。井戸と同じ水脈が近くを流れているため、この半地下の空間は、夏でもあまり暑く感じないらしい。

今ではこの井戸を利用している家も6、7軒に減ったというが、年に1回の掃除は使用している住民みんなで、協力してやっているという。「世代が変わっても、変わらない絆がここにはあるんです」水窪が大好きだという小塩さんのすっと伸びた背筋は、地域への愛着や誇りを物語っていた。

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