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更新日:2023年3月24日
浜松市文化財情報/Vol.34
Vol.34 平成23年1月15日
昨年12月10日、国の文化審議会は市内に所在する22件の天竜浜名湖鉄道関係建造物を登録するよう文部科学大臣に答申を行いました。
これにより、市内の登録有形文化財は累計30件になります。そこで、今号と次号の2回にわたり新たに登録される鉄道施設のうち主なものを紹介します。
今回登録されるのは、掛川市から湖西市までの沿線5市1町にわたる31施設です(うち浜松市内22件)。
天浜線関係建造物は転車台・扇形車庫など既に5施設が登録されているため累計36件となりました。
また、鉄道施設の一括登録は若桜鉄道(鳥取県)、わたらせ渓谷鐵道(群馬県~栃木県)に次いで全国で3例目になります。
天浜線の前身である国鉄二俣線は昭和10年に掛川-森間、昭和11年に新所原-三ヶ日間、昭和13年に三ヶ日-金指間が部分開通し、昭和15年全線(全長68km)が開通しました。
当時の姿を良くとどめる木造駅舎、隧道、橋梁などが沿線の豊かな自然と一体となった情緒あふれる景観を形成しており、全線まるごと昭和のノスタルジアに浸ることができます。
[本屋/上り上屋及びプラットホーム/下り上屋及びプラットホーム/運転区揚水機室/運転区高架貯水槽(既登録:機関車転車台/機関車扇形車庫/運転区事務室/運転区浴場/運転区休憩所)]
本社が置かれている天浜線の中心駅。
既登録5施設に加え、今回駅舎など5施設が登録され、まさに“文化財ステーション”となりました。
なかでも、改札を抜けた先の上屋は柱や梁の一部に古レールを転用しており、材料の工夫など昭和前期の建築技術を今に伝える貴重な建造物です。
天竜二俣駅本屋
(写真提供:天竜浜名湖鉄道株式会社)
既登録の転車台・扇形車庫・事務室
天竜二俣駅上屋及びプラットホーム
(写真提供:天竜浜名湖鉄道株式会社)
天竜川に架かる全長403mの路線中最長の橋梁で、全線開通時の昭和15年に建設されました。
列車で通過する際、眼下に天竜川の絶景を一望する天浜線を代表する絶景ポイントの1つです。
天竜川橋梁
(写真提供:天竜浜名湖鉄道株式会社)
[本屋及び上りプラットホーム/待合所及び下りプラットホーム]
昭和15年の建設当初の構成を全体に留める本屋と開放的な待合所、プラットホームが特徴です。
里山に溶け込んだプラットホームに列車が進入する光景は、古き良き日本の原風景そのものです。
宮口駅待合所及び下りプラットホーム
(写真提供:天竜浜名湖鉄道株式会社)
去る12月3日(金曜日)、県庁にて平成22年度静岡県教育委員会表彰受賞式典が行われ、北区引佐町の川名ひよんどり保存会が受賞しました。
川名ひよんどり保存会は、国指定重要無形民俗文化財「遠江のひよんどりとおくない」のうち『川名のひよんどり』の伝承活動を充実し、地域の文化を自らの手で守り伝えていく努力を続けています。
特に、全国的に後継者不足で維持が困難といわれる無形民俗文化財を後世に残し伝えるため、後継者育成活動を通して地域活性化に取り組んでいることが評価されました。
世襲の諸役と保存会・自治会が連携・協力し、小学生のほか青年から高齢者にいたるまで多数の地域住民が参加しており、地域の繋がりや世代間のコミュニケーションを大事にしながら活動しています。
このほか、積極的な公開活動(外部公演への出演)や八日堂の保存修理事業を実施するなど民俗文化財伝承の基盤整備に取り組んだことも評価されました。
1月4日の祭礼も豪壮かつ厳粛に行われ、伝統の1ページが彩られました。
また、かわな野外活動センター100万人達成記念「かわなフェスティバル」(2月5日)や、静岡県富士山の日プレイベント「ふじのくに芸術回廊フェスティバル」(2月20日/グランシップ)への出演も予定されており、今後なお一層の活躍が期待されます。
12月には、こんな調査活動などを行いました。
1日 |
(水曜日) |
東区豊町 |
大通西遺跡工事立会い |
---|---|---|---|
2日 |
(木曜日) |
天竜区春野 |
御堂平遺跡工事立会い |
6日 |
(月曜日) |
中区元城町 |
第2回文化財保護審議会 |
7日 |
(火曜日) |
中区元城町 |
浜松城跡工事立会い |
9日 |
(木曜日) |
中区元城町 |
新潟市歴史文化課視察対応 |
10日 |
(金曜日) |
東区天王町 |
天王中野遺跡試掘調査 |
12日 |
(日曜日) |
天竜区春野町 |
はるの山城見学ウォーキング |
15日 |
(水曜日) |
天竜区水窪町 |
西浦田楽保存会との意見交換 |
16日 |
(木曜日) |
中区元城町 |
浜松城跡試掘調査 |
17日 |
(金曜日) |
西区佐浜町 |
千部経遺跡工事立会 |
19日 |
(日曜日) |
東区宮竹町 |
宮竹野際遺跡現地説明会(参加者107名) |
20日 |
(月曜日) |
東区恒武町 |
恒武遺跡群工事 |
21日 |
(火曜日) |
中区田町 |
文化的価値ある建築物の保存活用検討会 |
■浜松地域人づくり大学「戦国の城のはなし」
1日(水曜日)・8日(水曜日)・15日(水曜日) 計3回[可美公園総合センター]
1月30日(日曜日)
市指定史跡「大平城跡」
大平城現地見学会
午前10時30分、午後1時30分/大平城跡(浜北区大平)
2月6日(日曜日)
県指定無形民俗文化財「横尾歌舞伎」
横尾歌舞伎特別公演
午後1時30分~/開明座(北区引佐町横尾)
2月20日(日曜日)
重要無形民俗文化財「遠江のひよんどりとおくない」
「川名のひよんどり」ふじのくに芸術回廊フェスティバル出演
午後1時00分~/グランシップ(静岡市)
2月20日(日曜日)
重要無形民俗文化財「西浦の田楽」
西浦田楽
午後9時頃~翌朝/天竜区水窪町奥領家
昨年の11月から12月にかけて、北区春野町にある犬居城跡と堀之内城山城跡の発掘調査を実施しました。
これらの城跡は、天正2年(1574)から天正4年(1576)の間、遠江平定を狙う徳川家康と、甲斐の武田氏の支援を受けて対抗した天野氏が争った舞台と考えられます。
二城とも本格的な発掘調査は初めてのことで、大きな成果を得ることができました。
犬居城は、鎌倉時代から続く国人領主、天野氏が本拠地にした詰城です。
天野氏が日常住む居館は、犬居城の南麓にあったとみられます。
尾根の最高所が鐘打山山頂(標高290m)で、そこから、東に向かって城の施設がつくられています。
発掘調査では、大規模な堀と土塁の様子が確認できました。
とくに、三の曲輪(別名、馬出曲輪)を囲む堀は断面箱形を呈し、幅6.1m、深さ1.7mほどの大規模なものでした。
戦国時代に急速に重要性を増していた鉄砲への防御性を高める工夫とみられます。
堀之内城山城は犬居城の東南約1.5kmの山頂に位置します。
森町から春野に抜ける秋葉街道に接しており、二俣に続く街道への眺望も開けています。
山頂の本曲輪を中心にして、尾根づたいに曲輪や堀切、竪堀などの施設が確認できます。
発掘調査では、曲輪の状態や堀の形状が確認できたとともに、数多くの遺物が出土しました。
出土品の年代は16世紀後葉であり、徳川家康が、犬居城を攻めた時期に重なることが注目できます。
昨年12月12日の日曜日には、これら二つの山城の発掘調査成果をご紹介する山城ウォーキングを開催しました。
当日は穏やかな天候に恵まれ、200名を超す歴史ファンの皆さんに発掘調査現場を見学していただきました。
<編集後記>
“なんだか古めかしいなぁ”“田舎じみてるなぁ”と思われていた(失礼な書き方ですみません…)天浜線の鉄道施設が文化財登録されます。
ある意味、日常生活の中に埋もれていた文化財が“発掘”された訳で、この地域の宝を後世に残し伝えるため(=天浜線が存続するため)みんなで天浜線を利用しましょう!
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