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更新日:2023年3月24日
はままつの文化財
Vol.27 平成22年6月15日
浜松市内に所在する文化財建造物のうち、昨年度までに修理を終えたものや現在修理工事を実施しているものがいくつかあります。
このうち一般の方が見学可能な社寺建築を紹介します。
2010年5月17日から6月11日にかけて、浜松城跡の発掘調査を実施しました。
歴史検証を目的にした浜松城跡の発掘は昨年に続いて二回目で、今回は天守門跡(てんしゅもんあと)の上部と富士見櫓跡(ふじみやぐらあと)の未発掘部分を調査しました。
発掘調査によって、天守門跡の上層部分から建物の基礎としていた礎石(そせき)や屋根に葺かれていた瓦が出土し、天守門は二階建て構造の櫓門(やぐらもん)であることが分かりました。
昨年の調査では門扉が取り付く一階部分の礎石が確認できていますので、この度の調査で天守門のかつての姿がほぼ判明したといえます。
調査風景
礎石など建物の基礎の距離を計測すると、天守門の二階部分にあたる櫓は南北幅11.82mであることが分かりました。
この規模は6尺5寸(1.97m)を1間とする京間の6間分にあたります。
天守門は、天守曲輪(てんしゅぐるわ)に至る正門にふさわしい壮大な門であったといえるでしょう。
また、櫓門の北側および南側からは、塀の屋根に葺く専用の瓦(塀瓦)が大量に出土しました。
このことから、天守門の両脇の石垣の上には土塀が巡っていたことが裏付けられます。
出土品には天守門の屋根に葺かれていた軒丸瓦(のきまるかわら)や軒平瓦(のきひらかわら)に加え、屋根の最上部に配置されていた鯱瓦(しゃちかわら)の破片がみられます。
これら出土品の特徴から、天守門は安土桃山時代(16世紀末)に建てられ、その後も江戸時代(17~19世紀)を通じて維持され続けたことが分かります。
天守は江戸時代のはじめ頃には消滅していますので、天守門は浜松城の中でも最も高い位置にある建物として、浜松城を象徴する存在であったことがうかがえます。
いっぽう富士見櫓跡では、北側の石垣が折れ曲がる様子が新たに確認できました。
石垣を折り曲げる造作は、城の防御性を高めるためのもので、安土桃山時代の築城技術の一端を考える上でも貴重な発見です。
また、富士見櫓跡から天守門跡と同様に鯱瓦が出土したことも特筆できます。
天守門出土の瓦
富士見櫓出土鯱瓦
こうした多岐にわたる調査成果を広くお伝えするため、5月30日(日曜日)には発掘調査現場を一般に公開する現地説明会を開催しました。
説明会の当日は好天に恵まれたこともあり、620人にわたる市民の皆さんが見学にいらっしゃいました。
当日は入場制限を設ける盛況ぶりで、市民の皆さんの関心の高さがうかがえます。
現地説明会では、天守門跡と富士見櫓跡の2箇所の調査現場を公開しました。
天守門跡では、櫓の外壁に用いられた漆喰(しっくい)の剥がれた跡をはじめ、鯱瓦、軒平瓦など出土した状態をご覧いただきました。
富士見櫓跡では2009年の調査で確認した礎石列を再度発掘し、今年の調査成果と合わせて観察していただきました。
また、城内の一角に展示コーナーを設け、2009年、2010年の出土品を速報公開しました。
浜松城の現地調査は6月で終了いたしましたが、文化財課では、今後、天守門と富士見櫓の具体像を解明するため、出土品の分析を進めていきます。
現地説明会のようす
5月には、こんな調査活動などを行いました。
6日(木曜日) |
南区増楽町 |
増楽遺跡試掘調査 |
---|---|---|
9日(日曜日) |
南区中田島町他 |
ウェルカメクリーン作戦 |
12日(水曜日) |
北区細江町気賀 |
狐塚古墳老ヶ谷遺跡踏査 |
13日(木曜日) |
南区高塚町 |
大島遺跡試掘調査 |
17日(月曜日) |
浜松城跡 |
発掘調査開始 |
20日(木曜日) |
浜松城跡 |
大平小5・6年生見学 |
25日(火曜日) |
西区篠原町 |
篠原町仲村遺跡試掘調査 |
28日(金曜日) |
浜松城跡 |
開誠館中2年生、中部中2年生見学 |
30日(日曜日) |
浜松城跡 |
現地説明会(見学者620人) |
31日(月曜日) |
天竜区二俣町 |
鉄道遺産構造物現地調査 |
市指定無形民俗文化財「遠州大念仏」
遠州大念仏
午後6時ごろ~/犀ヶ崖資料館前庭(中区鹿谷町)
市指定名勝「新宮池」
新宮池夏祭り
7月24日は午後6時~、7月25日は午前9時~
天竜区春野町新宮神社
市指定天然記念物「浜松海岸のアカウミガメ及びその産卵地」
親と子のウミガメ教室
第1回 ウミガメ講座(オリエンテーション)
7月24日(土曜日)/可美公園総合センターホール
第2回 ウミガメの産卵調査と海岸ウォッチング
7月31日(土曜日)/遠州灘海岸(ふ化小屋前集合)
第3回 ウミガメの放流会
8月28日(土曜日)/遠州灘海岸(中田島砂丘入口)
去る5月29日(土曜日)30日(日曜日)の2日間、天竜区二俣町阿蔵の天竜浜名湖鉄道天竜二俣駅構内で全線開通70周年の記念イベントが開催されました。
当日は、国の登録有形文化財となっている「転車台」「扇形車庫」「運転区浴場」などの建造物が公開されるとともに、特別に転車台の乗車体験や鉄道模型の展示もあるということで、“撮り鉄”だけでなく“乗り鉄”“車両鉄”“模型鉄”など多くの鉄ちゃんたちで賑わいました。
また、扇形車庫北側スペースに「旧国鉄二俣線・天浜線 鉄道歴史館」が開館し、貴重な鉄道関係資料が展示・公開されました。
こちらも大勢の家族連れや、過去の乗車体験を懐かしむ高齢者の方々が熱心に見学していました。
なお、国の登録有形文化財「転車台」や「扇形車庫」などの見学は、毎週金・土・日・月曜日と祝日、時間は午前10時40分からと午後1時40分からの1日2回(1回約45分程度)となっています。
上記時間に天竜二俣駅待合室に集合されると、天浜線スタッフが構内を案内してくれます。
申し込みは不要ですので、梅雨の合間に“鉄ちゃん”気分を味わってみてはいかがでしょうか?
※ 現役の鉄道施設のため、構内ではスタッフの指示に従ってください。
なお、見学に際しては所定の入場料金がかかります。
鉄道資料館入口
鉄道資料館内部のようす
<編集後記>
平城遷都1300年祭が開催されている奈良県から、先日ショッキングなニュースが飛び込んできました。
奈良県御所市にある国指定史跡巨勢山古墳群の一部が、隣接するゴルフ場の拡張工事に伴い壊されてしまったというもので、業者は文化財保護法に基づく文化庁の許可を受けていませんでした。
未然に防ぐことはできなかったのでしょうか。複雑な心境です。
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