高校生とSDGs ~市内高校生のかがやく取組を紹介~/オイスカ浜松国際高等学校 環境SDGsプロジェクト

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後列(左から):フェルナンドさん、深津さん、長谷部さん

前列(左から):フィさん、竹内さん、鈴木さん、安里さん

 

オイスカ浜松国際高等学校の100人以上の生徒が参加する「環境SDGsプロジェクト」。有志による実行委員会組織であり、学年や部活の垣根をこえてSDGsに取り組んでいます。


「スポーツ×環境SDGs」を掲げ、中田島砂丘で行う「スポーツビーチクリーン」は、新聞やテレビなどでもたびたび紹介されています。今回は、これらの活動を企画・運営する中心メンバーのみなさんに集まっていただき、活動のきっかけ、周りの反応、今後のことなど、お話を伺いました。

 

【SDGs達成に向けた取組のポイント】

  • 海岸清掃や海岸侵食といった課題に対し、海岸の保全活動を「ごみひろい選手権」、「堆砂垣設置競争」、「松葉かき選手権」など、ビーチ‧マリンスポーツ形式で取り組むことで、楽しみながら参加できるよう工夫している。
  • 他校の高校生や大学生、企業、市民活動団体、行政といった多様なステークホルダーと協働して活動しており、持続可能な取組みがされている。

自分たちの得意を生かし、地域の課題にチャレンジ

楽しいから、続けられる

──環境SDGsプロジェクトについて教えてください。

 

竹内さん:環境SDGsプロジェクトでは、「スポーツビーチクリーン」をはじめ、災害に強い美しい海岸を目指した環境保全活動「浜と松プロジェクト」、浜名湖のマングローブ植栽実験やアマモの生態観察などをする「浜名湖ブルーカーボンプロジェクト」、海岸林の再生活動や学校林の保全活動などをする「森づくり大作戦」など、さまざまな活動に取り組んでいます。環境SDGsプロジェクトは部活動ではないので、メンバーは部活動や生徒会などと掛け持ちしながら参加しています。

 

──「スポーツビーチクリーン」では、どのようなことをしているのですか?

 

深津さん:海岸や湖岸のごみ問題、海岸侵食など、地域の課題に対する環境保全活動に楽しみながら参加してもらいたいという思いから、2020年に企画しました。これまでに、野球部の提案で始まった「中田島砂丘ごみひろい選手権」、女子バレー部の協力で実現した「堆砂垣設置競争」、風で砂が飛び基礎があらわになった防潮堤に砂を運ぶ「中田島砂丘バケツリレー」、丈夫な松林を育てる「松葉かき選手権」を開催しました。

これらの取組をビーチ・マリンスポーツとして浜松市へ提案したところ共感いただき、私たち実行委員会が浜松市ビーチ・マリンスポーツ推進協議会に加盟することになりました。

 

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「松葉かき選手権」の様子

 

──みなさんが、環境SDGsプロジェクトに参加しようと思ったきっかけは何ですか?

 

鈴木さん:高校に入ったら何か新しいこと、人の役に立てることにチャレンジしたいと考えていました。私は地元が舞阪で、海が近く、松枯れの問題については中学生のころから関心があり、入学してすぐに海岸保全の活動に参加しました。ただ、所属していた女子バレー部との両立が難しくなり、先生に相談したところ「みんなで参加するのはどう?」と提案いただきました。女子バレー部自体が、部活動だけでなく、ボランティア活動などにも参加して、地域とのかかわりを大切にすることをモットーにしてします。今は女子バレー部全員で環境SDGsプロジェクトに参加しています。

 

安里さん:私は女子硬式野球部に所属していて、最初は部活動でごみ拾い選手権に参加しました。でも実際の砂浜は石やがれきがごろごろしていて、「ごみ拾い」ではなく「石拾い」の状態でした。どうしてこんなに石やがれきがあるのか疑問に思い調べたところ、海岸侵食の問題があることを知りました。私はスポーツが大好きで、高校に入ってから人の役に立つことにも魅力を感じる中で、自分の個性や特長を生かしてできることを考えたときに、「スポーツ×SDGs」の取組がちょうど合致しました。環境保全活動と自分の大好きなスポーツを掛け合わせることで、楽しみながら取り組むことができると分かり、積極的に参加するようになりました。

 

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「中田島砂丘ごみひろい選手権」の様子

 

フェルナンドさん:私は、最初は部活動として参加したのがきっかけです。先輩方と楽しい時間を過ごすうちに参加する頻度が増えていきました。父から教えてもらった、のこぎりなどの工具を扱うスキルが堆砂垣を作る竹を切る時に生かせるなど、自分が活動に貢献できることにやりがいを感じるようになりました。

 

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「堆砂垣設置競争」の様子

高校生たちの成長と地域への影響

──活動を通じて、ご自身や周りにどのような変化がありましたか?

 

安里さん:写真などで見ていた中田島砂丘と、砂が無く石やがれきだらけの風景とのギャップに驚きました。がれきによる景観の悪化、アカウミガメやカワラハンミョウといった生態系への影響、海岸侵食など、一カ所にたくさんの問題が集まっていることに気が付きました。活動を通じて、ものごとを多面的に見られるようになったと思います。また、部活動中に校外をランニングしていた際、道路のゴミが気になって拾うこともありました。そうしたらいつの間にか部員みんなでごみ拾いしながらランニングしていました。

 

竹内さん:テレビや新聞から取材を受け、私たちの活動を地元や全国に発信することで、周りの人にも良い影響を与えられていると思います。他校の友だちから、「新聞を見たよ、そんな活動しているなんてすごいじゃん」という連絡があり、後日、話をしたら、彼女も家族と一緒にごみ拾いをしたり、一人でボランティア活動に参加したりするようになったと教えてもらいました。

 

フィさん:以前、別の表彰で環境保全の取組を発表する機会があり、その時は緊張してうまく話すことができませんでした。でも、いろいろな場面で発表するうちに、今ではしっかりプレゼンできるようになり、そういう点でも成長を感じます。

 

──取組の中で、東京の高校生と交流する機会があったとのことですが、浜松の高校生と東京の高校生では、SDGsへの取組に違いはありますか?

 

竹内さん:例えば、東京の高校ではフェアトレードの様なテーマが多いように感じます。私たちが行う具体的で地域に根ざした取組について説明すると、みなさん驚かれたり、興味を持たれたりします。

地域の課題に関係ない人は、一人もいない

──地域の課題を、「自分ごと」として考えられるようになったきっかけはありますか?また、活動を続けられる理由は何かありますか?

 

竹内さん:「地域の課題」をもっと広い視野で見ると、国際的、社会的な課題につながっていて、課題に興味がない人はいても、関係がない人は一人もいません。そういうマインドでみんな取り組んでいるのではないかと思います。

 

安里さん:私は、活動を通じて生まれた仲間との絆や、新しい人間関係のつながりが、活動を続けるモチベーションになっています。

 

鈴木さん:私にとっては、この活動がコミュニケーションのツールになっています。初めて堆砂垣設置競争に参加したときは、新一年生が入部したばかりで、話すきっかけにもなったし、結果的にチームとしての結束力が高まりました。「地域の課題解決のため」というと敷居が高くなってしまうけど、カラオケに行くくらい自然になったらいいですね。

 

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中田島砂丘周辺の航空写真を広げ、アイデアが次々と飛び出す

 

安里さん:環境SDGsプロジェクトは、「活動したい」という意欲がある人が集まっているので、雰囲気が非常に良いです。私たちは高校生なので勉強が大事ですし、みんな、部活動や生徒会など、それぞれに掛け持ちしているので、無理をするとパンクしてしまいます。誰かが事情があってしばらく参加できなくても、別の誰かが支えることで活動が回っています。今のこの空気感が、みんなが意欲的に取り組めている秘訣なのかもしれません。

 

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2年生で、次期リーダーの安里さん(写真中央)

 

──活動をしていて困ったことや、サポートしてほしいと思うことはありますか?

 

安里さん:アイデアが浮かんでも、活動の規模が大きくなると、情報発信や運営などの面で力不足を感じることがあります。特に知識や道具の使い方、具体的なアドバイスなど、一緒に協力してくれる大人のサポートがあるとうれしいです。アイデアだけで終わらせず、ちゃんと形にしたいと思っています。

 

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先生の指導も仰ぎながら、さまざまな活動を実践していく

 

──今後はどのようなことに取り組みたいですか?

 

鈴木さん:「高校生ボランティア・アワード2023」で古田敦也賞を受賞しました。その際、古田さんから、「レジ袋が有料になっても利用が減らない状況を解決するにはどうしたらよいか」という宿題をいただいたので、これについて何かよいアイデアを考えたいです。

 

長谷部さん:私はまだ、これをしたいという具体的なものはありませんが、環境SDGsプロジェクトを本格的にするようになって、身近にSDGsの問題があることを意識するようになりました。活動を続けながら、興味のあるものを見つけたいと思っています。

 

安里さん:私は、浜松シティマラソンと連携して、道路のごみ拾いを実施したいと考えています。シティマラソンが開催されている間は交通規制しているので、普段は手を付けられない場所も掃除でき、大会参加者や市民へのアピールにもつながると思います。東京などではごみ拾いのスポーツ大会がありますが、主催は大人ばかりなので、これを高校生が主催したらインパクトがあると思いますし、実現したいです。

 

オイスカ浜松国際高等学校 環境SDGsプロジェクト

1983年開校。「自然の恩恵に感謝し、国際社会に貢献できる心豊かな人材を育成する」を教育目標に教育活動を実践している。また、「環境教育宣言!」「スポーツウェルネス宣言!」など、オイスカSDGs教育4つの宣言があり、田植えや稲刈り、植林といった活動を行う。2020年に、従前から行っていた活動を引き継ぐ形で「環境SDGsプロジェクト」として活動を開始。100人を超える生徒が活動に参加している。

https://www.oisca.ed.jp/learning/sdgs/(別ウィンドウが開きます)

 

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